異動の辞令とは?人事異動の辞令が出たらやることと、異動の種類

異動の辞令の意味と種類、辞令が出たらやることを紹介する記事のアイキャッチ。机の上の書類と段ボール箱

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ある日、上司から「来月から別の部署に移ってもらいます」と告げられた。『異動の辞令って、そもそも何?断れるの?何から準備すればいいの?』と、頭の中が質問だらけになりますよね。

結論から言うと、異動の辞令とは、会社があなたの部署・勤務地・役職などを変えることを正式に命じる通知です。異動には大きく4つの種類があり、どれに当たるかで辞令の文言も、準備することも変わります。

この記事を読めば、異動の辞令の意味と4つの種類、会社が異動を命じられる根拠、辞令が出た後にやることが分かります。

目次

異動辞令とは?人事異動の辞令の意味をかみくだくと

先に結論

異動辞令とは、人事異動を正式に命じる通知のことです。辞令に書かれた日付(発令日)から、新しい部署や勤務地での立場が始まります。

『辞令とは異動のこと?』と思う方もいるかもしれません。実は、辞令は異動だけでなく、採用・昇進・休職・退職などでも出ます。そのうち、人事異動を命じるものを「異動の辞令」と呼んでいるんです。

言葉意味
人事異動会社の中での配置・勤務地・役職などが変わること
配置転換(配転)同じ会社の中で、仕事の内容や勤務地が変わること
異動辞令人事異動を正式に命じる通知。辞令書・掲示・メールなど形は会社による
発令日辞令の効力が始まる日。「○月○日付」と書かれる日付

辞令そのものの意味は辞令とは?意味と種類をわかりやすくで紹介しています。

「辞令」は法律で決まった言葉ではない

意外かもしれませんが、労働基準法や労働契約法の本文には「辞令」という言葉が出てきません。

ですから、異動の辞令を紙で渡すか、社内掲示やメールで知らせるかは、会社の就業規則や慣行で決まります。配置転換の辞令が口頭だけ、という会社もあるんです。

公務員の異動の辞令は規則で決まっている

公務員の場合は、少し事情が違います。国家公務員は、人事院規則8-12で、転任や配置換をした時などに「人事異動通知書」を交付することが決められています。

ただし、課の単位の中での配置換えなどは、通知書に代わる文書の交付などで足りるともされています。地方公務員は、各自治体の規程で辞令書の扱いを決めています。

公務員の辞令の全体像は公務員の辞令とは?人事異動通知書と辞令書で紹介しています。

異動は4種類:部署・勤務地・役職・会社をまたぐ異動

4つのどれかで考えると準備が見える

一口に異動と言っても、部署が変わるだけなのか、引っ越しが必要なのかで、準備はまったく違いますよね。異動を4つに分けて、辞令の文言と準備することを並べてみました。

異動を部署の異動・勤務地の異動・役職の異動・会社をまたぐ異動の4種類に分けて、準備することを示した図解
異動の種類辞令の文言の例準備することの中心
部署の異動「営業部勤務を命ずる」引き継ぎ、新しい仕事の覚え直し
勤務地の異動(転勤)「○○支店勤務を命ずる」住まい・通勤・家族の予定の調整
役職の異動「営業部長を命ずる」「課長の職を解く」部下や権限の引き継ぎ、役職手当の確認
会社をまたぐ異動(出向・転籍)「株式会社○○への出向を命ずる」出向先の労働条件、戻り方の確認

文言の例は、伏せ字や一般名に置き換えたものです。実際の言い回しは会社ごとに違います。

部署の異動:部署異動の辞令でいちばん多い形

部署異動の辞令は、同じ事業所の中で所属が変わる形です。引っ越しは不要ですが、仕事の内容が大きく変わることもあります。

例えば、営業から企画へ、総務から経理へ、といった異動です。新しい部署の仕事を覚えるまでは、戸惑うことも多いはずです。

部署異動の辞令を受けたら、新しい部署で求められる役割を、早めに上司へ聞いておくと安心です。

「新しい部署では、最初にどの仕事から担当することになりますか」
「まずは今の担当者について、月末の締めの作業から覚えてもらう予定です」

こんなふうに最初の仕事が分かるだけでも、気持ちがずいぶん楽になりますよ。

勤務地の異動(転勤):住まいが変わるかが分かれ目

勤務地が変わる異動のうち、引っ越しを伴うものが一般に「転勤」と呼ばれます。準備にいちばん時間がかかる異動です。

一方、今の家から通える範囲の別の事業所に移る場合は、引っ越しは要りません。それでも、通勤経路や通勤手当の手続きは変わるので、辞令が出たら早めに確かめておきましょう。

最高裁判所の判決(昭和61年7月14日)も、転居を伴う転勤は、一般に労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えると述べています。転勤のくわしい流れは転勤の辞令とは?何日前に出るかと準備の進め方で紹介しています。

役職の異動:昇進だけでなく、役職を外れる場合も

役職の異動には、昇進して役職に就く場合と、役職を外れる場合があります。どちらも辞令が出ることが多いです。

役職が変わると、部下の評価や決裁など、任される権限も変わります。前任者から引き継ぐ時は、仕事の中身だけでなく、どこまで自分で決めてよいかも確かめておくと安心です。

役職手当がいつから変わるかも気になるところですよね。厚生労働省のモデル就業規則には、昇格による役付手当は発令日の属する賃金月から、降格による場合は次の賃金月から支給するという規程例があります。実際の扱いは、自分の会社の賃金規程で確かめてみてください。

昇進の辞令は昇進・昇格の辞令、役職を外れる辞令は降格・役職解任の辞令とは?で、それぞれくわしく紹介しています。

会社をまたぐ異動:出向と転籍は扱いが違う

会社をまたぐ異動には、「出向」と「転籍」があります。同じように見えて、元の会社との関係が大きく違います。

出向(在籍型出向)
  • 元の会社に籍を置いたまま、別の会社で働く
  • 労働契約法第14条で、出向命令が権利の濫用なら無効とされている
  • 就業規則などに出向の定めが整っていれば、個別の同意なしに命じられる場合がある
転籍
  • 元の会社との雇用関係を終えて、別の会社に籍を移す
  • 民法第625条第1項で、使用者は労働者の承諾なしに権利を第三者に譲れない
  • 本人の同意が必要とされている

出向と転籍の違いは出向・転籍の辞令とは?違いと戻る時の辞令でくわしく紹介しています。

会社はなぜ異動を命じられる?根拠と限界

ここでの結論

会社が異動を命じられる根拠は、就業規則や労働契約です。ただ、その力にも限界があり、業務上の必要性がない場合などは権利の濫用とされることがあります。

『そもそも、会社は勝手に異動を決めていいの?』と感じる方もいるはずです。ここは大事なところなので、公的な資料をもとに見ていきますね。

根拠は就業規則と労働契約

厚生労働省のモデル就業規則には、人事異動について次のような規程例があります。

会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。

出典:厚生労働省「モデル就業規則」第8条(人事異動)

同じ条文には、在籍のまま関係会社へ出向させることがあること、労働者は正当な理由なくこれを拒めないことも書かれています。

厚生労働省の解説では、就業規則にこうした定めがあり、勤務地や職種が限定されていない場合なら、会社は個々の同意なしに転勤や配置転換を命じられるとされています。

権利の濫用になる3つの場合

一方で、最高裁判所の判決(昭和61年7月14日)は、転勤命令でも、次のような特段の事情がある場合は権利の濫用になるとしています。

権利の濫用になりうる事情かみくだくと
業務上の必要性がないその異動をする仕事上の理由がない
不当な動機・目的がある仕事以外の目的で命じている
通常甘受すべき程度を著しく超える不利益があるふつう受け入れる範囲を大きく超える負担がかかる

なお、同じ判決は、業務上の必要性を「余人をもっては容易に替え難い」ほど高いものに限らず、労働力の適正配置や能力開発などに役立つなら認めるとしています。

職種や勤務地が限定されている場合

労働契約で職種や勤務地が限定されている場合は、話が変わります。

厚生労働省の解説では、最高裁判所の判決(令和6年4月26日)を紹介し、職種限定の合意がある場合、会社は個別の同意なしに合意に反する配置転換を命じられないとしています。

自分の労働条件で確かめたいこと
  • 労働条件通知書や雇用契約書に、勤務地や職種の限定が書かれているか
  • 2024年4月1日以降に結んだ契約なら、就業場所・業務の「変更の範囲」がどう書かれているか
  • 就業規則に、人事異動や出向の定めがあるか
  • 育児や介護の事情があるか

2024年4月1日からは、労働契約を結ぶ時に、就業場所と業務の「変更の範囲」も書面で示すことになりました。厚生労働省の説明では、変更の範囲とは、将来の配置転換などで変わりうる就業場所・業務の範囲のことです。

育児・介護の事情は配慮の対象になる

育児・介護休業法第26条は、就業の場所の変更を伴う異動で、子の養育や家族の介護が難しくなる労働者がいる時は、その状況に配慮しなければならないと定めています。

家庭の事情がある時は、辞令が出る前の面談や内示の段階で、早めに伝えておくことが大切です。

人事異動の辞令が出たらやること

確認・引き継ぎ・挨拶・着任の順に進める

人事異動の辞令が出たら、まず辞令の中身を確かめ、それから引き継ぎと挨拶、着任の準備へと進めます。順番を決めておくと、慌てずに済みますよ。

辞令が出た直後は、気持ちが追いつかないこともありますよね。そんな時こそ、やることを順番に並べておくと落ち着けます。

人事異動の辞令が出てから着任するまでにやることを、順番に並べた図解
人事異動の辞令が出たらやること
  1. 辞令の内容(異動先・発令日・役職)を確かめる
  2. 上司と、引き継ぎの範囲と期限を話し合う
  3. 担当業務の一覧と引き継ぎ資料を作る
  4. 社内外の関係者に挨拶する
  5. 必要な社内手続き(通勤手当・住所変更など)を済ませる
  6. 発令日に新しい部署で挨拶し、仕事の範囲を確かめる

辞令の内容を確かめる

まずは、辞令に書かれた内容を確かめましょう。口頭で伝えられた場合は、メモを取っておくと後で役に立ちます。

辞令を受けたら確かめたいこと
  • 異動先の部署名・勤務地・役職
  • 発令日(効力が始まる日)と、着任する日
  • 仕事の内容がどう変わるか
  • 給与や手当が変わるか、いつから変わるか
  • 転居を伴う場合の会社の扱い

例えば、こんなふうに聞いてみると自然です。

「発令日は○月○日と伺いましたが、新しい部署へはいつから出社すればよいでしょうか」
「○月○日の朝に、新しい部署の課長のところへ行ってください」

引き継ぎを進める

異動の辞令が出た後、引き継ぎ資料をまとめる準備をイメージした机の写真

引き継ぎは、異動の準備の中でいちばん時間がかかるところです。辞令から発令日までの期間が短いこともあるので、早めに始めておきましょう。

引き継ぐもの書いておくこと
担当している業務業務の名前、頻度、締め切り
進行中の案件今の状況、次にやること、関係者
取引先・社内の窓口連絡先、やりとりの注意点
資料・データ保存場所、使い方

引き継ぎ資料の最後に、異動後の自分の連絡先を書いておくと、後任の方が困った時に助かります。

挨拶と着任

社内外への挨拶は、正式な辞令が出て公表されてから行うのが一般的です。辞令を受けた時の挨拶や返事の例文は辞令を受けた時の挨拶・返事で紹介しています。

発令日には、新しい部署で着任の挨拶をします。前の部署での経験と、新しい仕事への意気込みを短く伝えれば十分ですよ。

異動の辞令に納得できない時の考え方と相談先

ここでの結論

異動の辞令に納得できない時は、まず会社と話し合うのが先です。辞令を無視したり、事実と違う理由で断ったりするのは避けましょう。

『どうしてもこの異動は受け入れられない』と感じることもあるはずです。そう感じるのは、決しておかしなことではありません。

ただ、ここまで見てきたとおり、就業規則に定めがあり、勤務地や職種が限定されていなければ、会社は個々の同意なしに異動を命じられるとされています。

納得できない時の進め方
  1. 労働条件通知書と就業規則を読み、勤務地や職種の限定があるかを確かめる
  2. 異動の理由と、家庭の事情などで困ることを上司や人事担当者に伝える
  3. 時期をずらす、ほかの部署にするなど、調整の余地があるかを相談する
  4. 話し合っても解決しない時は、公的な窓口や専門家に相談する
一人で判断しないで

辞令を受けずに出社しないなど、自分だけの判断で動くと、かえって立場が苦しくなることがあります。迷った時は、都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに相談できます。厚生労働省の案内では、配置転換の相談も受け付けていて、労働者・事業主のどちらからの相談も受けています。

辞令を断れるかどうかは辞令は拒否できる?断る前に確かめたいことで、くわしく紹介しています。

異動をきっかけに、働き方を考える人へ

異動の辞令をきっかけに、今の会社で続けるか、ほかの道を考えるかを迷う方もいるはずです。

新しい部署で経験を広げるのは、キャリアにとって大きな財産になります。そのうえで、外の選択肢も並べて確かめておくと、どちらを選んでも納得して進めますよ。

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転勤や異動の辞令は、これからの働き方を考えるきっかけにもなります。今の会社で続ける道と並べて、勤務地や仕事内容の希望を伝えて求人を紹介してもらえる転職エージェントで、選択肢を確かめておくのも一つの方法です。

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異動の辞令でよくある疑問

知恵袋で多い質問に答えます

異動の辞令について、ネットのQ&Aで閲覧数が多かった質問を選び、要約して答えます。

疑問1:事務職から現場の仕事への異動の辞令が出て悩んでいる

「事務職として働いてきたのに、現場作業への異動の辞令が出て悩んでいる」という相談は、とても多く読まれています。

まずは、労働条件通知書や雇用契約書に、職種の限定が書かれているかを確かめてみてください。職種限定の合意がある場合は、会社は個別の同意なしに合意に反する配置転換を命じられない、と厚生労働省は解説しています。

限定がない場合でも、仕事の内容や体への負担、家庭の事情など、困ることを具体的に会社へ伝えて相談できます。

疑問2:異動の辞令をきっかけに退職したい

「来年の春から別部署での勤務が確定したと言われ、退職を考えている」という質問もありました。

退職を考えること自体は、自然な選択肢の一つです。民法第627条第1項では、期間の定めのない雇用の場合、解約の申入れから2週間を経過すると雇用が終わるとされています。

ただ、会社の就業規則にも退職の手続きが決められています。辞める前に確かめたいことは辞令が出て会社を辞めたいと思ったらで紹介しています。

疑問3:異動の辞令が出た後に、会社が内容を変えることはある?

「4月1日付の異動の辞令を受けた後に、会社が内容を変えることはできるのか」という質問も見られます。

辞令を出した後の変更について、法律で決まった手続きはありません。変える場合は、改めて辞令を出し直す形が一般的です。

変更の理由や新しい発令日が分からない時は、人事担当者に確かめておきましょう。

疑問4:出向の辞令が出てから、仕事への気持ちが落ちてしまった

「他社への出向の辞令が出てから、仕事へのやる気がすっかりなくなった」という相談もありました。

『自分は必要とされていないのでは』と感じてしまうのは、無理もないことです。ただ、在籍型の出向は元の会社に籍を置いたままの働き方で、戻ることが前提の形でもあります。

まずは、出向の期間、出向先での仕事の範囲、戻る時の扱いを人事担当者に確かめてみてください。先の見通しが分かると、目の前の仕事への向き合い方も変わってきます。

出向先で身につけた経験は、元の会社に戻った後にも、外の道を考える時にも生かせます。気持ちが落ち込んだ時ほど、一人で抱え込まずに信頼できる人へ話してみてくださいね。

よくある質問

異動辞令とは何ですか?

会社が部署・勤務地・役職などを変えることを正式に命じる通知です。辞令書・社内掲示・メールなど、形は会社によって違います。

異動の辞令は断れますか?

就業規則に配置転換の定めがあり、勤務地や職種が限定されていない場合、会社は個々の同意なしに異動を命じられるとされています。ただ、業務上の必要性がない場合などは権利の濫用とされることもあるので、まず会社と相談しましょう。

部署異動でも辞令は出ますか?

出す会社が多いですが、法律で決まっているわけではありません。同じ課の中の担当替えなどは、辞令を出さずに口頭で伝える会社もあります。

配置転換と転勤の違いは何ですか?

配置転換は、同じ会社の中で仕事の内容や勤務地が変わることの全体を指します。そのうち、引っ越しを伴う勤務地の変更が一般に転勤と呼ばれます。

出向の辞令が出たら、元の会社に戻れますか?

在籍型の出向なら、元の会社に籍を置いたままなので、戻ることが前提の形です。戻る時期や方法は、就業規則や出向の取り決めで確かめましょう。

まとめ

この記事の要点
  • 異動の辞令は、部署・勤務地・役職などを変えることを正式に命じる通知
  • 異動は「部署」「勤務地」「役職」「会社をまたぐ」の4種類で、準備することが変わる
  • 会社が異動を命じる根拠は就業規則や労働契約。業務上の必要性がない場合などは権利の濫用になりうる
  • 辞令が出たら、確認・引き継ぎ・挨拶・着任の順に進める
  • 納得できない時は、まず会社と相談し、解決しなければ公的な窓口へ
辞令ドットコム

辞令ドットコム 編集部

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