給与辞令とは?昇給の辞令がいつ出るかと、出ない会社・金額を確かめる方法

給与辞令の意味と、昇給の辞令がいつ出るか、金額の確かめ方を紹介する記事のアイキャッチ。机の上の書類と封筒、電卓

当サイトの記事は編集部が法令や厚生労働省・人事院などの公的機関の公開情報を調べて独自に執筆しています。個別の労働相談・法律相談には対応していません。記事内に転職サービスへの案内(広告)を含む場合があります。

給料明細と一緒に「給与辞令」と書かれた紙を渡された。『これって何の書類?昇給したってこと?金額は合っているの?』と、首をかしげた方も多いはずです。

結論から言うと、給与辞令とは、基本給や手当など、あなたの給与の中身が変わることを会社が知らせる通知です。法律で出し方が決まった書類ではないので、出すかどうかも書き方も会社ごとに違います。

この記事を読めば、給与辞令の意味と3つの種類、昇給の辞令が出る時期、金額を自分で確かめる方法が分かります。

目次

給与辞令とは?昇給の辞令をかみくだくと

先に結論

給与辞令とは、給与(賃金)の額や内訳が変わる時に、会社から本人に渡される通知です。昇給の辞令とは、そのうち基本給が上がることを知らせるものを指すことが多いです。

『辞令って、異動や転勤の時に出るものじゃないの?』と思いますよね。

実は、辞令は立場や処遇が変わる時に広く使われる言葉で、給与が変わる時に出すものも辞令と呼ぶ会社があるんです。賃金辞令とは、給与辞令と同じものを指す呼び方です。

給与辞令に書かれることが多い項目

項目書かれる内容の例意味
発令日令和○年○月○日付新しい給与が始まる日
基本給基本給を○○とする毎月の給与の土台になる額
等級・号俸○等級○号俸とする会社の賃金表の中での位置
手当役職手当を○○とする役職や家族、通勤などに応じた上乗せ
合計月額合計基本給と手当を足した額

辞令に「合計」とあっても、残業代など月によって変わる分は入っていないことがほとんどです。毎月の総支給額とは違うこともあるので、給与明細と見くらべてみてください。

辞令そのものの意味は、辞令とは?意味と種類をわかりやすくで紹介しています。

給与辞令は義務?法律と就業規則の関係

ここでの結論

会社員について、昇給や給与改定のたびに給与辞令を出すよう定めた法律の条文は、確認できませんでした。ただ、昇給の仕組みは就業規則に書くことが法律で決まっているので、就業規則を見れば昇給の考え方が分かります。

『給与辞令って、会社が出さないといけないものなの?』と疑問に思う方もいるはずです。給与辞令の義務について、法律で決まっていることと、会社が決めていることを分けて見てみますね。

法律で決まっていること

労働基準法の第89条では、常時10人以上の労働者を使う会社に就業規則を作り、届け出ることを求めています。そして就業規則に書かなければならない事項に、「賃金の決定、計算及び支払の方法」と並んで「昇給に関する事項」が入っています。

厚生労働省のモデル就業規則の解説も、昇給に関する事項は就業規則に書かなければならない事項に当たるので、昇給期間など昇給の条件を定める必要がある、としています。

また、入社する時には、賃金や昇給に関する事項を労働者に明示することになっています(労働基準法施行規則第5条)。ただし、書面で明示しなければならない事項からは「昇給に関する事項」が外されています。

決まっていること中身根拠
就業規則に昇給を書く昇給に関する事項は就業規則に書く事項労働基準法第89条
入社時に賃金を明示する賃金の決め方・支払い方・昇給を明示する労働基準法施行規則第5条
昇給は書面でなくてもよい書面で明示する事項から昇給は除かれている労働基準法施行規則第5条第3項
昇給のたびの辞令定めた条文は確認できなかった会社の決まりによる

会社や役所が決めていること

給与辞令を出すかどうかは、会社の就業規則や慣行で決まります。紙で渡す会社もあれば、給与明細やメールで知らせるだけの会社もあります。

公務員でも、扱いは役所ごとです。例えば札幌市の規程では、昇格や昇給の発令は辞令書の交付を省略でき、口頭などの方法で発令するとされています。

福岡市の規程でも、昇給など職員の身分に重大な変更を及ぼさないものは、所要事項を連記した書面などで辞令書に代えることがある、とされています。

昇給辞令は必要?

昇給辞令が必要かどうかは、法律ではなく会社の決まりで決まります。辞令が出ない会社でも、昇給の仕組み自体は就業規則に書かれているはずなので、まずはそちらを見てみてください。

給与辞令は3種類:昇給・手当の変更・等級や号俸の変更

3つに分けると読み方が分かる

給与辞令は、何が変わったかで「昇給(基本給が変わる)」「手当の変更」「等級・号俸の変更」の3つに分けられます。どれに当たるかが分かると、辞令の数字をどこで確かめればいいかも見えてきます。

『辞令にいろいろ数字が並んでいて、どこを見ればいいか分からない』という方も多いですよね。給与辞令を3つに分けて、確かめる場所と一緒に並べてみました。

給与辞令を、昇給・手当の変更・等級や号俸の変更の3種類に分けて、それぞれ確かめる書類を示した図解
種類何が変わるか辞令の文面の例確かめる書類
昇給基本給の額「基本給を○○に改める」就業規則の昇給の決まり、賃金規程
手当の変更役職手当・家族手当・通勤手当など「役職手当を支給する」賃金規程の手当の項目
等級・号俸の変更賃金表の中での位置「○級○号俸とする」賃金表、人事制度の資料

種類1:昇給(基本給が変わる)

給与辞令の昇給は、基本給の額が上がることです。毎月の給与の土台になるので、賞与や残業代の計算に関わる会社もあります。

どの基準で上がったのかは、就業規則の昇給の項目や賃金規程に書かれています。

種類2:手当の変更

役職についた時の役職手当や、家族が増えた時の家族手当など、手当が変わる時にも給与辞令が出ることがあります。

厚生労働省のモデル就業規則には、役付手当を「昇格によるときは、発令日の属する賃金月から支給する」「降格によるときは、発令日の属する賃金月の次の賃金月から支給する」という規程例があります。手当がいつから変わるかも、会社の規程で決まっているんです。

種類3:等級・号俸の変更

等級や号俸は、会社の賃金表の中で「どの段にいるか」を示す数字です。号俸とは、同じ等級の中での細かい段のことだと考えると分かりやすいですよね。

公務員の辞令にも、この書き方が出てきます。札幌市の規程の採用の文例には「職給料表 級に決定する」「号俸を給する」があり、徳島県教育委員会の文例にも「何職給料表何級に決定する」「何号俸を給する」があります。

基本給が上がって、手当が減っていた時

給与辞令で基本給は上がったのに、別の手当が減っていて、合計はあまり変わらないこともありますよね。『これって昇給したことになるの?』と迷う方もいるはずです。

結論から言うと、まずは何がどう変わったのかを1つずつ分けて見ることが大切です。基本給と手当では、賞与や残業代の計算にどう関わるかが会社ごとに違うからです。

内訳が組み替わった時に確かめること
  • 基本給・各手当が、それぞれいくらからいくらに変わったか
  • 減った手当は、どんな決まりで払われていたものか
  • 賞与や残業代の計算に、基本給と手当のどちらが使われるか
  • 内訳の変更について、会社から説明や同意の求めがあったか

分からない点は、辞令を持って人事の担当に聞いてみてください。説明を聞いてから判断しても遅くありません。

昇進・昇格と給与の関係は、昇進・昇格の辞令でくわしく紹介しています。

昇給の辞令はいつ出る?昇給なしの時は

ここでの結論

昇給の辞令がいつ出るかは、就業規則の昇給の項目で決まります。年に1回、決まった時期に昇給する会社が多い一方で、昇給しない年があると定めている会社もあります。

『同期は給与辞令をもらったのに、自分には来ない』と不安になることもありますよね。昇給の時期と、昇給なしの時の考え方を見てみます。

モデル就業規則の昇給の規程例

厚生労働省のモデル就業規則(第49条)では、昇給を次のように書いています。

規程例の中身かみくだくと
勤務成績その他が良好な労働者について、毎年_月_日をもって行う決まった日に年1回昇給する(日付は会社が決める)
会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある業績しだいで昇給しない年もある
顕著な業績が認められた労働者は、別に昇給させることがある決まった時期以外に昇給することもある
昇給額は、勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する金額は一人ひとり違う

自分の会社の就業規則に、これと似た書き方があるか確かめてみてください。昇給の月日が書かれていれば、そのころに給与辞令や通知が出るはずです。

昇給の辞令は「発令日」から見る

昇給の辞令では、発令日がいつかも大事なポイントです。発令日とは、辞令の効力が始まる日のことです。

例えば「○月○日付で基本給を改める」とあれば、その日を含む給与の計算期間から新しい額になるのか、次の期間からなのかは、会社の賃金規程で決まります。いつの給与明細から変わるかを、担当の方に聞いておくと安心です。

給与辞令で昇給なしだった時

給与辞令で昇給なしだったり、そもそも辞令が出なかったりした時は、まず就業規則の決まりを確かめましょう。

昇給なしの時に確かめる順番
  1. 就業規則や賃金規程の昇給の項目を読む
  2. 昇給しない場合の決まり(業績・評価など)があるか確かめる
  3. 自分の評価の結果がどうだったか、上司に聞いてみる
  4. 次の昇給の時期と、評価の基準を確かめる

上司に聞く時は、責める言い方ではなく、次に向けた相談として聞くと話が進みやすくなります。

「今回の昇給について、評価のどこを伸ばせばよいか教えていただけますか?」

このように聞けば、次の目標も見えてきます。

給与が下がった時は別の話

昇給しないことと、給与が下がることは別の話です。厚生労働省の解説では、労働条件の不利益変更は労働者の同意を得て行うことができるものの、同意の有無は慎重に判断されるとしています。給与の額が下がる辞令を受けた時は、同意を求められている内容をよく確かめてみてください。

降格による給与の変わり方は、降格・役職解任の辞令とは?で紹介しています。

給与明細と雇用契約書で照らし合わせるチェックリスト

ここでの結論

給与辞令を受けたら、辞令の数字を「給与明細」「雇用契約書(労働条件通知書)」「就業規則・賃金規程」の3つと照らし合わせると、間違いに気づきやすくなります。おかしいと思ったら、まず人事や総務の担当に聞いてみましょう。

『給与辞令の金額、本当に合っているのかな』と気になったら、手元の書類で確かめられます。チェックリストにまとめました。

給与辞令の数字を、給与明細・雇用契約書・就業規則の3つの書類と照らし合わせる流れを示した図解
給与辞令を受けたら照らし合わせること
  • 辞令の基本給と、次の給与明細の基本給が同じか
  • 辞令の手当が、給与明細の手当の欄に入っているか
  • 発令日と、新しい給与が始まる月が合っているか
  • 雇用契約書(労働条件通知書)の賃金の書き方と食い違っていないか
  • 等級・号俸が、賃金表のその段の額と合っているか
  • 前の給与辞令や給与明細と比べて、何が変わったか説明できるか

給与辞令の間違いに気づいた時

給与辞令の間違いに気づいたら、そのままにせず、早めに担当の方へ伝えるのがいちばんです。

間違いに気づいた時の流れ
  1. 辞令と給与明細の、どの数字が食い違っているかメモする
  2. 根拠になる書類(雇用契約書・賃金表など)を手元にそろえる
  3. 人事や総務の担当に、事実だけを落ち着いて伝える
  4. 直った辞令や、次の給与明細で直っているか確かめる

伝える時は、こんな言い方がいいですね。

「給与辞令の基本給と、賃金表の○級○号俸の額が違っているようです。確認していただけますか?」

厚生労働省のQ&Aでは、給料の引き下げがすぐに労働基準法違反になるわけではない一方で、労働条件通知書や就業規則に書かれた額より実際の支払いが少ない場合は、労働基準法第24条の違反(給料の一部不払い)になる可能性があるとしています。

話し合っても解決しない時は、都道府県労働局などにある総合労働相談コーナーで相談できます。賃金の引き下げも相談の対象で、労働者からの相談も事業主からの相談も受け付けています。

給与辞令を保管しておく理由

給与辞令や給与明細は、あとで見くらべる時の大事な手がかりになります。受け取ったら、捨てずに取っておきましょう。

会社の側も、賃金台帳などを保存する決まりがあります。労働基準法第109条では保存期間を5年としていて、経過措置で当分の間は3年とされています。

辞令書の保管の考え方は、辞令書は捨てていい?保管期間の目安で紹介しています。

給与辞令をメールで受け取った時

最近は、給与辞令をメールや社内システムで知らせる会社もありますよね。給与辞令をメールで出すことの決まりも、会社ごとです。

メールで届いた時は、PDFなどを保存しておき、紙と同じように給与明細と照らし合わせてみてください。受け取ったことを上司に伝える時は、「給与辞令のご連絡、ありがとうございます。内容を確認しました」と短く返信すれば十分です。

給与辞令をきっかけに、働き方を考える人へ

給与辞令を見て、『この先、自分の給与はどう上がっていくんだろう』と考えることもありますよね。

今の会社で評価を上げていく道も、もちろん大切です。そのうえで、今の会社で続ける道と並べて外の選択肢も確かめておくと、これからの働き方を判断しやすくなります。

LHH転職エージェント(PR)

辞令をきっかけに働き方を見直すなら、転職エージェントに相談してみる

転勤や異動の辞令は、これからの働き方を考えるきっかけにもなります。今の会社で続ける道と並べて、勤務地や仕事内容の希望を伝えて求人を紹介してもらえる転職エージェントで、選択肢を確かめておくのも一つの方法です。

転職サポートLHH転職エージェントの公式サイトを見る

(転職エージェント「LHH転職エージェント」の公式サイトに移動します。サービスの内容・利用条件は公式サイトで最新の情報をご確認ください)

給与辞令でよくある疑問に答えます

ここでの結論

知恵袋などでよく見かけるのは「給与辞令とは何か」「会社は全員分発行するべきか」「辞令の等級と基本給が合っていない」の3つです。どれも、就業規則と賃金表を見ると答えの手がかりが見つかります。

給与辞令について、ネットのQ&Aでよく見かける質問を3つ取り上げます。質問は要約して紹介しますね。

疑問1:パートで働き始めて給与辞令をもらった。これは何?

入社して間もないパートの方が、給料明細と一緒に給与辞令を受け取って、何の書類か分からないという質問です。

結論から言うと、給与辞令は、あなたの給与がいくらに決まったか、または変わったかを知らせる通知です。パートでも、時給などが変わる時に出す会社があります。

まずは、辞令の額と雇用契約書(労働条件通知書)の額を見くらべてみてください。違っていれば、担当の方に理由を聞いてみましょう。

疑問2:給与辞令は全員分発行するべき?(人事担当の方から)

昇給の時期に給与辞令を出しているが、全員分を発行するべきか、という人事担当の方の質問です。

これまで見てきたとおり、昇給のたびに給与辞令を出すよう定めた法律の条文は確認できませんでした。全員に出すか、変わった人だけに出すかは、会社で決めてかまいません。

ただ、出し方を変える時は、社員が戸惑わないよう前もって知らせておくと安心です。給与明細で知らせる、社内システムで知らせるなど、代わりの方法も一緒に伝えてみてください。

辞令の書式を作る時は、辞令のテンプレート・書式の雛形が参考になります。

疑問3:給与辞令の等級と基本給の額が合っていない

同じ等級の人と基本給が違う、辞令の等級と額が合わない気がする、という相談です。

同じ等級でも、号俸(等級の中の段)が違えば基本給も違うことがあります。まずは、辞令に号俸まで書かれているか、賃金表のその段の額と合っているかを確かめましょう。

それでも合わない時は、先ほどの「間違いに気づいた時の流れ」の順に、担当の方へ確かめてみてください。

よくある質問

給与辞令と給与明細は何が違いますか?

給与辞令は、給与の額や内訳が変わることを知らせる通知です。給与明細は、毎月実際に支払われた額の内訳です。辞令の内容が明細に正しく反映されているかを見くらべると安心です。

給与辞令に書かれた合計は、総支給額と同じですか?

同じとは限りません。辞令の合計は基本給と決まった手当の合計であることが多く、残業代など月ごとに変わる分は入っていないのが一般的です。

給与辞令が出ない会社は問題がありますか?

昇給のたびに給与辞令を出すよう定めた法律の条文は確認できませんでした。辞令が出なくても、昇給の仕組みは就業規則に書かれているはずなので、そちらを確かめてみてください。

給与辞令の昇給額が少ないと感じた時はどうすればいいですか?

まずは就業規則や賃金規程で、昇給額の決め方を確かめましょう。そのうえで、評価のどこを伸ばせばよいかを上司に相談すると、次の目標が見えてきます。

給与辞令をメールで受け取ったら、返信は必要ですか?

返信が決まりになっているわけではありませんが、受け取ったことを短く伝えておくと丁寧です。「内容を確認しました」とひと言返し、添付の辞令は保存しておきましょう。

給与辞令はいつまで保管すればいいですか?

本人が保管する期間に決まりはありません。あとで給与明細と見くらべる手がかりになるので、少なくとも次の給与辞令が出るまでは取っておくと安心です。

まとめ

この記事の要点
  • 給与辞令とは、基本給や手当など給与の中身が変わることを知らせる通知
  • 昇給のたびに給与辞令を出すよう定めた法律の条文は確認できず、出し方は会社ごと
  • 昇給に関する事項は就業規則に書く決まりがあるので、まず就業規則を見る
  • 給与辞令は「昇給」「手当の変更」「等級・号俸の変更」の3つに分けると読みやすい
  • 辞令の数字は、給与明細・雇用契約書・賃金表と照らし合わせて確かめる
辞令ドットコム

辞令ドットコム 編集部

辞令の意味や種類、辞令交付式での受け取り方、辞令書の書き方、異動・転勤の辞令が出た時の考え方を、法令と公的機関の情報をもとにわかりやすく整理している情報サイトです。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次