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上司から「来月から関連会社に行ってもらいたい」と言われ、渡された紙には「出向を命ずる」の文字。『出向って転勤とどう違うの?もう元の会社には戻れないの?』と不安になりますよね。
結論から言うと、出向の辞令は「元の会社に籍を残したまま、別の会社で働く」ことを命じるものです。籍そのものを移す転籍の辞令とは、同意の扱いも戻れるかどうかも違います。
この記事を読めば、出向と転籍の違い、辞令の文言の見方、出向解除で戻る時の辞令が分かります。
出向の辞令とは?転籍の辞令とどう違う?
出向(在籍型出向)は、元の会社との雇用関係を続けたまま、出向先の会社で働くことです。転籍は、元の会社との雇用関係を終わらせて、別の会社に籍を移すことです。
『出向も転籍も、別の会社で働くなら同じでは?』と思う方も多いはずです。
実は、一番の違いは「元の会社との雇用契約が残るかどうか」なんです。厚生労働省の通達では、労働契約法14条の「出向」を、いわゆる在籍型出向のことだとしています。
| 言葉 | かみくだくと | 元の会社との雇用関係 |
|---|---|---|
| 出向(在籍型出向) | 籍を残して別の会社で働く | 続く |
| 転籍(移籍型出向) | 籍を別の会社へ移す | 終わる |
| 転勤 | 同じ会社の中で勤務地が変わる | そのまま(同じ会社) |
香川労働局に掲載された資料では、出向と転籍は、元の事業所に「復帰する」のか「復帰しない」のかで大きく違うと説明されています。
出向と転勤は何が違う?
『転勤と言われたと思ったら、出向だった』という声もよく聞きます。転勤は同じ会社の中で勤務地が変わるだけで、雇い主は変わりません。
出向では、毎日の仕事の指示を出すのが出向先の会社になります。例えば、こんな会話になることがあります。
「来月からは、出向先の部長の指示で動いてもらうことになります」
「分かりました。給与や休日は、どちらの会社の決まりになりますか」
この2つ目の質問が、出向ではとても大事なんです。
転勤や部署異動など、会社の中での異動は異動の辞令とは?で紹介しています。辞令そのものの意味は辞令とは?をどうぞ。
雇用契約・同意・戻れるかで比べる出向と転籍
出向と転籍は「雇用契約がどこにあるか」「本人の同意がいるか」「元の会社に戻れるか」の3つで比べると分かりやすいです。辞令を受けたら、まずこの3つを確かめてみてください。

| くらべる軸 | 出向(在籍型出向) | 転籍 |
|---|---|---|
| 雇用契約がどこにあるか | 元の会社と出向先の両方に雇用関係がある | 元の会社との雇用関係は終わり、転籍先だけになる |
| 本人の同意 | 個別の同意か、就業規則などで出向の条件が整っていることが必要 | 本人の承諾が必要(民法625条1項) |
| 元の会社に戻れるか | 戻ることが前提 | 戻ることは前提にしていない |
| 会社が命じる時の限界 | 権利の濫用なら無効(労働契約法14条) | 一方的には命じられない |
出向は就業規則の定めが前提
厚生労働省のハンドブックでは、在籍型出向を命じるには、本人の「個別的な同意を得る」か、出向先での賃金・労働条件、期間、復帰の仕方などが就業規則や労働協約で整っている必要があるとされています。
労働契約法14条では、出向の命令が、その必要性や対象者の選び方などに照らして権利の濫用と認められる場合、その命令は無効になると決めています。
転籍は本人の承諾がいる
民法625条1項には「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。」とあります。
厚生労働省の相談センターの解説でも、転籍は一方的に命じることはできず、本人の同意が必要とされています。ただ、入社時に包括的な同意をしていた場合に有効とされることがある、とも書かれています。
辞令に書かれる文言の例
辞令の書き方は会社によって違いますが、よく見かける形を伏せ字で並べてみました。
| 場面 | 文言の例 |
|---|---|
| 出向の辞令 | 「株式会社○○へ出向を命ずる」「出向期間は令和○年○月○日までとする」 |
| 出向先での配属 | 「出向先 株式会社○○ 営業部勤務とする」 |
| 転籍の辞令 | 「令和○年○月○日付で株式会社○○へ転籍する」(本人の同意書とあわせて) |
| 出向解除の辞令 | 「株式会社○○への出向を解き、営業部勤務を命ずる」 |
辞令の文言のルールは辞令の書き方で紹介しています。
国家公務員の人事異動通知書の文例では、他の任命権者への異動を「ウに出向させる」と書きます。自治体でも、札幌市の規程には「何々に出向を命ずる」という文例があります。
出向辞令が出たら確かめたいこと
出向の辞令を受けたら、すぐに返事を決める前に、就業規則と出向の条件を確かめておきましょう。断れるかどうかも、そこで変わってきます。
『出向って断れるの?』という疑問は、とても多いですよね。
厚生労働省の裁判例の解説では、就業規則と労働協約に出向の規定があり、出向期間や出向中の地位、賃金などに出向者の利益に配慮した詳しい規定がある場合、会社は個別の同意なしに在籍出向を命じられるとされています。
一方で、出向の命令が権利の濫用にあたれば、労働契約法14条で無効になります。つまり「規定があるか」「濫用にあたらないか」の両方がポイントなんです。
- 就業規則に出向の規定があるかを見る
- 出向期間と、元の会社に戻る時期の決め方を確かめる
- 出向中の賃金・労働時間・休日はどちらの会社の基準かを聞く
- 社会保険や退職金の扱いがどうなるかを確かめる
- 転籍ではなく出向(籍が残る)であることを書面で確かめる
- 育児や介護の事情があれば、早めに会社へ伝える
2024年4月1日以降に結んだ労働契約では、労働条件通知書に就業場所と業務の「変更の範囲」が書かれています。厚生労働省のパンフレットでは、出向先が元の会社での限定の範囲を超える場合は、その旨を明示するとされています。
断りたい時の順番
断りたい事情がある時は、まず上司や人事に理由を伝えて相談するのが先です。話し合っても解決しない時は、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」に相談できます。
断る時の考え方は辞令は拒否できる?で詳しく紹介しています。
辞令が出てから出向するまでの期間は?
『辞令から出向まで、どのくらい時間があるもの?』という疑問もありますよね。
出向や転勤を何日前に伝えるかは、法律では決まっていません。厚生労働省の転勤に関する手引きでは、決まった転勤は、できる限り時間的余裕をもって本人に告知することが重要だとしています。
実際の期間は、会社の就業規則や慣行で決まります。内示の段階で、正式な辞令の日と出向の開始日を確かめておくと、引き継ぎや家族の予定が立てやすくなりますよ。
| 段階 | 確かめておくこと |
|---|---|
| 内示・打診 | 出向か転籍か、出向先の会社と仕事の中身 |
| 辞令の交付 | 発令日(効力が始まる日)と出向期間 |
| 出向の開始前 | 引き継ぎの範囲、出向先での手続き、通勤や住まい |
| 出向中 | 元の会社の窓口になる人、戻る時期の見通し |
公益財団法人の産業雇用安定センターは、出向・移籍を支援する機関で、無料で相談できると労働局の資料で案内されています。
「出向」と言われたのに、よく読むと転籍の同意書だった、ということもあります。書類に署名する前に、どちらの話なのかを確かめておきましょう。
出向解除の辞令と、出向から転籍に変わる時
出向が終わって元の会社に戻る時は、出向解除の辞令が出るのが一般的です。出向中に転籍へ切り替える場合は、本人の同意が必要になります。
『出向したら、ずっと戻れないのでは』と心配する方もいますよね。在籍型出向は、元の会社に戻ることが前提の仕組みです。

出向解除の辞令では、「○○への出向を解く」と書いたうえで、戻った後の所属を「○○部勤務を命ずる」とあわせて示すことが多いです。
| 時期 | 出る辞令・書類の例 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 出向の開始 | 出向の辞令、出向先での配属の知らせ | 期間・条件・戻り方 |
| 出向の延長 | 出向期間を延ばす辞令 | 新しい期限 |
| 出向の解除 | 出向解除の辞令と、元の会社での配属辞令 | 戻った後の部署と勤務地 |
| 転籍への切り替え | 転籍の辞令と本人の同意書 | 雇用関係が元の会社で終わること |
福岡労働局の資料では、出向期間中でも、両社の意向と出向者本人の同意があれば、出向先へ移籍することは可能とされています。
戻った後の部署は、出向前と同じ?
『戻ったら元の席があるの?』と気になる方も多いですよね。戻った後の所属は、出向前と同じ部署とは限りません。
出向解除の辞令では、戻り先の部署や勤務地が改めて示されます。出向中に身につけた経験を生かせる部署へ配属されることもあります。
戻る時期が近づいたら、上司や人事に「戻った後の仕事について、希望を伝えてもいいですか」と相談しておくと安心ですよ。
出向から転籍への切り替えを打診されたら
出向中に「このまま転籍しないか」と打診されることもあります。転籍すると、元の会社との雇用関係は終わります。
返事をする前に、転籍先での労働条件を書面で受け取り、元の会社での退職の扱いも確かめておきましょう。
辞令をきっかけに、この会社で働き続けるか、別の道も考えるか、悩む方もいるはずです。出向を受けて経験を積むのも大切な選択肢です。そのうえで外の選択肢も並べておくと、落ち着いて判断しやすくなりますよ。
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辞令をきっかけに働き方を見直すなら、転職エージェントに相談してみる
転勤や異動の辞令は、これからの働き方を考えるきっかけにもなります。今の会社で続ける道と並べて、勤務地や仕事内容の希望を伝えて求人を紹介してもらえる転職エージェントで、選択肢を確かめておくのも一つの方法です。
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出向・転籍の辞令でよくある疑問
出向・転籍の辞令について、多く読まれている質問を選んで答えます。
出向しても元の会社に戻れる?
「出向しても、再び元の会社に戻ることはできるのか」という質問は、とても多く読まれています。
在籍型出向は、元の会社との雇用関係を残したまま働く仕組みなので、戻ることが前提です。いつ、どの部署に戻るかは、就業規則や出向の取り決めで決まります。
辞令に出向期間が書かれていなければ、人事に「出向期間と、戻る時の決め方を教えてください」と聞いてみてください。
出向の辞令を辞退したい
「会社から出向の辞令が出たが、辞退したい」という相談も多く見られます。
就業規則に出向の規定があり、条件が整っていれば、断るのは難しいことがあります。一方、家族の事情など大きな不利益がある時は、まず会社に伝えて相談するのが先です。
育児や介護の事情がある時は、育児・介護休業法26条で、会社は就業場所の変更を伴う配置の変更をする際、その状況に配慮しなければならないとされています。
辞令は「出向を命ずる」なのに、給料も保険もグループ会社。これは出向?転籍?
「辞令には出向とあるが、給料や健康保険はグループ会社になっている」という質問もありました。
出向でも、出向先が給与を払ったり、社会保険の手続きをしたりすることはあります。大事なのは、元の会社との雇用関係が残っているかどうかです。
不安な時は「私の籍は今も元の会社にありますか」と人事に聞き、出向の取り決めを書面で見せてもらいましょう。
よくある質問
出向の辞令と転籍の辞令の違いは何ですか?
出向は元の会社に籍を残したまま別の会社で働くこと、転籍は籍そのものを別の会社に移すことです。転籍では元の会社との雇用関係が終わります。
転籍の辞令は断れますか?
民法625条1項で、会社は労働者の承諾なしに権利を第三者に譲り渡せないとされています。転籍は本人の同意が必要で、一方的には命じられません。
出向の辞令は断れますか?
就業規則などに出向の条件が整っていれば、個別の同意なしに命じられることがあります。ただ、権利の濫用にあたる命令は労働契約法14条で無効です。
出向の辞令は何日前に出ますか?
法律で決まった日数はなく、会社の就業規則や慣行で決まります。内示の時に、発令日と出向の開始日を確かめておきましょう。
出向解除の辞令には何が書かれますか?
「○○への出向を解く」と、戻った後の所属をあわせて書くことが多いです。書き方は会社によって違います。
まとめ
- 出向は籍を残して別の会社で働くこと、転籍は籍を移すこと
- 転籍には本人の承諾が必要(民法625条1項)
- 出向の命令も、権利の濫用なら無効(労働契約法14条)
- 出向解除の辞令では、戻った後の所属をあわせて確かめる





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