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今の仕事はそのままで、「来月から企画部も兼務してほしい」と言われた。『兼務辞令って、異動とは違うの?仕事が倍になるの?』と戸惑いますよね。
結論から言うと、兼務辞令とは、今の部署や役職を持ったまま、別の部署や役職の仕事もあわせて担当するよう命じる辞令です。異動のように元の所属を離れるわけではありません。
この記事を読めば、兼務辞令の3つの種類と書き方、兼務を解く時の辞令の文例が分かります。
兼務辞令とは?意味をかみくだくと
兼務とは、今の所属を残したまま、ほかの所属の仕事も兼ねることです。その兼務を正式に命じるのが兼務辞令です。
『兼務と異動、何が違うの?』と思う方も多いはずです。異動は元の部署を離れて新しい部署に移ること、兼務は元の部署に残ったまま、もう一つの部署にも所属することです。
| 言葉 | かみくだくと | 元の所属 |
|---|---|---|
| 異動 | 部署や勤務地が変わる | 離れる |
| 兼務 | 今の所属を残して、ほかの所属も担当する | 残る |
| 事務取扱 | 同じか下の職の仕事を、代わりに取り扱う | 残る |
| 事務代理 | 上の職の仕事を、代わりに務める | 残る |
会社員の兼務辞令は、法律で形が決まっているわけではありません。労働基準法や労働契約法には「辞令」という言葉自体がなく、兼務をどう命じるかは会社の就業規則や慣行で決まります。
辞令そのものの意味は辞令とは?意味をわかりやすく、異動の辞令は異動の辞令とは?で紹介しています。
公務員の規程での「兼任」「併任」
公務員の規程では、兼務の考え方がはっきり書かれています。福岡市の人事異動取扱規程では、兼任を「職員を現に有する職を保有させたまま他の職に任命すること」としています。
国家公務員の人事院規則8-12では、併任を「現に官職に任命されている職員を、その官職を占めさせたまま、他の官職に任命すること」と定めています。どちらも「今の職を持ったまま」という点が兼務と同じですね。
兼務は3つ:部署・役職・会社をまたぐ兼務
一口に兼務と言っても、部署を兼ねるのか、役職を兼ねるのか、別の会社の仕事を兼ねるのかで、確かめることが変わります。発令の文例と解除の文例を対にして並べてみました。

| 兼務の種類 | 発令の文例 | 解除の文例 |
|---|---|---|
| 部署の兼務 | 「営業部勤務とし、企画部兼務を命ずる」 | 「企画部兼務を解く」 |
| 役職の兼務 | 「営業部長とし、企画部長を兼ねて命ずる」 | 「企画部長の兼務を解く」 |
| 役職の事務取扱 | 「企画部長事務取扱を命ずる」 | 「企画部長事務取扱を解く」 |
| 会社をまたぐ兼務 | 「株式会社○○ 営業部兼務を命ずる」 | 「株式会社○○ 営業部兼務を解く」 |
文例は、札幌市や鳥取県の規程にある「兼ねて命ずる」「兼務を解く」「事務取扱を解く」といった書き方を、会社向けにかみくだいたものです。実際の言い回しは、会社の過去の辞令にそろえてみてください。
部署の兼務
いちばんよくあるのが、部署の兼務です。例えば、新しいプロジェクトのために、営業部の人が企画部にも籍を置く場合ですね。
勤務場所が変わらないことも多いので、仕事の配分をどうするかが大事になります。
役職の兼務
課長が部長の仕事をあわせて担う、部長が二つの部の部長を兼ねる、といった形です。役職の兼務は、後任が決まるまでのつなぎとして出ることもあります。
昇進との関係が気になる方は昇進・昇格の辞令も読んでみてください。
会社をまたぐ兼務
親会社と子会社など、別の会社の仕事を兼ねる形です。この場合は、籍をどちらに置くのか、出向にあたるのかを確かめておくことが大切です。
出向の命令が権利の濫用にあたる場合は、労働契約法14条で無効とされています。出向との違いは出向・転籍の辞令とは?で紹介しています。
会社をまたぐ兼務を、口頭の依頼だけで始めてしまうことがあります。どちらの会社の指示で、どちらの会社の基準で働くのかを、書面で確かめておきましょう。
兼務辞令の書き方と、「兼」「事務取扱」の違い
兼務辞令は「主となる所属」と「兼ねる所属」を分けて書くのが基本です。「兼ねて命ずる」「兼務を命ずる」「事務取扱を命ずる」は、意味が少しずつ違います。
兼務辞令を作る担当の方は、『どこまで書けばいいの?』と迷いますよね。よく使われる形を伏せ字で見てみましょう。
○○ ○○ 殿
営業部長とし、企画部長を兼ねて命ずる
兼務の期間は令和○年○月○日までとする
令和○年○月○日
株式会社○○ 代表取締役 ○○ ○○
「兼務」「兼ねて」「事務取扱」の使い分け
| 書き方 | どんな時に使うか | 公的な規程の例 |
|---|---|---|
| 「○○兼務を命ずる」 | ほかの部署にもあわせて所属する | 札幌市「何部(何課)兼務を命ずる」 |
| 「○○を兼ねて命ずる」 | ほかの役職をあわせて務める | 札幌市・鳥取県「…を兼ねて命ずる」 |
| 「○○事務取扱を命ずる」 | 同じか下の職の仕事を取り扱う | 福岡市の用語定義 |
| 「○○事務代理を命ずる」 | 上の職の仕事を代わりに務める | 福岡市の用語定義 |
期間が決まっている兼務なら、辞令に期間を書いておくと、いつ解くのかで迷いません。辞令の書き方全体のルールは辞令の書き方で紹介しています。
- 主となる所属と、兼ねる所属を分けて書く
- 兼務の期間があれば、終わりの日を書く
- 発令日を「令和○年○月○日」で書く
- 社内の過去の辞令と、言い回しをそろえる
地方公務員・国家公務員の兼務辞令
地方公務員の兼務辞令は、各自治体の規程で文例が決まっています。国家公務員では「併任」として、人事異動通知書で知らせるのが基本です。
地方公務員の兼務辞令は、自治体ごとの規程で書き方が決まっています。札幌市の規程では、兼務の文例として「何部(何課)兼務を命ずる」「…長を兼ねて命ずる」、解く時は「何々兼務を解く」が並んでいます。
同じ札幌市の規程では、勤務や兼務の発令について、辞令書の交付を省略して口頭その他の方法で発令できるとされています。
| 区分 | 兼務・併任の発令 | 解く時 |
|---|---|---|
| 国家公務員(人事院の通知の文例) | 「アに併任する」 | 「アの併任を解除する」「アの併任は終了した」 |
| 札幌市の規程 | 「何部(何課)兼務を命ずる」 | 「何々兼務を解く」 |
| 鳥取県の規程(平成19年改正時点) | 「……を兼ねて命ずる」 | 「……の兼職を解く」「……兼務を解く」 |
国家公務員では、人事院規則8-12の第53条で、併任を行った場合や解除した場合に人事異動通知書を交付することになっています。
ただし第55条では、非常勤の官職に併任する場合などは、通知書に代わる文書の交付などで足りるとされています。
「事務取扱」と「事務代理」はどう違う?
公務員の辞令でよく見かけるのが、「事務取扱」と「事務代理」です。福岡市の規程では、事務代理を「その職より上位の職の代理を命ずること」、事務取扱を「その職と同等又は下位の職の取扱いを命ずること」と定めています。
例えば、部長が空席の課長の仕事をあわせて担うなら「課長事務取扱」です。課長が部長の仕事を代わりに務めるなら「部長事務代理」になります。
『どちらも代わりにやるだけでは?』と思いますよね。ポイントは、自分より上の職か、同じか下の職か、という向きの違いなんです。
掲示で知らせる自治体もある
京都市上下水道局の規程では、併任や兼職を命じたり解いたりする場合などは、通知書に書くべき事項を掲示するなどの方法で、交付に代えることがあるとしています。
兼務の発令は、紙の辞令ではなく掲示や一覧で知らされることもある、と覚えておくと戸惑いません。
公務員の辞令全体は公務員の辞令とは?で紹介しています。
兼務を解く時の辞令と、兼務を受けたら確かめること
兼務を解く時は「○○兼務を解く」と書いた辞令を出すのが一般的です。主となる所属はそのまま残るので、解く方だけを書けば足ります。
『兼務が終わる時にも辞令が出るの?』と思いますよね。期間を決めた兼務なら期間の終わりで、そうでなければ解除の辞令で終わるのが一般的です。
兼務辞令を受けたら確かめること
兼務を受けた側は、仕事が増える前に、次のことを上司と話しておくと安心です。

- どちらの部署の仕事を優先するかを決めておく
- 兼務先での上司・相談相手を確かめる
- 兼務の期間と、終わる時の決め方を聞く
- 会社をまたぐ兼務なら、籍と労働時間の基準を確かめる
- 役職の兼務なら、権限と手当の扱いを確かめる
2024年4月以降の契約なら「変更の範囲」も見ておく
2024年4月1日以降に結んだ労働契約では、労働条件通知書に、就業場所と業務の「変更の範囲」が書かれています(労働基準法施行規則5条1項1号の3)。
兼務で担当する仕事が、この範囲に入っているかを見ておくと安心です。範囲が「変更なし」になっているのに別の業務を兼ねる話が出た時は、人事に確かめてみてください。
例えば、こんな聞き方なら角が立ちません。
「兼務の間は、営業部と企画部の仕事、どちらを優先すればいいでしょうか」
「企画部の会議には、どのくらい出ればいいですか」
兼務をきっかけに、自分の得意なことや、これからの働き方を考え直す方もいます。任された仕事で経験を広げるのも、立派な選択です。そのうえで外の選択肢も確かめておくと、判断の材料が増えますよ。
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兼務辞令でよくある疑問
兼務辞令について、多く読まれている質問を選んで答えます。
辞令の「および」と「兼」はどう使い分ける?
「辞令の『および』と『兼』の使い分けを教えてほしい」という質問は、とても多く読まれています。
使い分けを決めた法律はなく、会社や自治体の規程で決めています。一般には、「兼」は主となる職がはっきりしていて、もう一つを兼ねる時に使われます。
一方、「営業部長および企画部長を命ずる」のように並べると、二つが同じ重さに見えます。どちらが主かを示したい時は「営業部長とし、企画部長を兼ねて命ずる」と書くと誤解が少ないですよ。
兼務が発令されたけど、紙の辞令がない。これも辞令?
「兼務が発令されたが、何をもって辞令というのか」という質問もありました。
会社員の場合、辞令を紙で出すかどうかは会社の決め方しだいです。社内掲示やメールで知らせる会社もあります。
公務員でも、札幌市の規程のように、兼務の発令は辞令書の交付を省略できる例があります。社内掲示の形は辞令の社内掲示・社内通知で紹介しています。
子会社に籍があり、親会社の仕事も兼務している
「子会社に籍があるが、親会社の営業も兼務している」という相談も見られます。
会社をまたぐ兼務では、籍のある会社と、仕事の指示を出す会社が違うことがあります。労働時間や評価がどちらの基準なのかを、人事に確かめておきましょう。
よくある質問
兼務辞令とは何ですか?
今の部署や役職を持ったまま、別の部署や役職の仕事もあわせて担当するよう命じる辞令です。元の所属を離れる異動とは違います。
兼務を解く時の辞令はどう書きますか?
「○○兼務を解く」「○○の兼務を解く」と書くのが一般的です。主となる所属は残るので、解く方だけを書けば足ります。
地方公務員の兼務辞令はどんな文言ですか?
自治体の規程で決まっています。札幌市の規程には「何部(何課)兼務を命ずる」「何々兼務を解く」という文例があります。
兼務に期間はありますか?
期間を決めて出す兼務と、決めずに出す兼務があります。期間がある時は辞令に終わりの日が書かれ、ない時は解除の辞令で終わるのが一般的です。
兼務辞令は断れますか?
兼務を命じられるかどうかは、就業規則や労働契約の内容で変わります。負担が大きい時は、まず上司や人事に事情を伝えて相談してみてください。
まとめ
- 兼務辞令は、今の所属を残したまま、ほかの仕事もあわせて命じる辞令
- 兼務は「部署」「役職」「会社をまたぐ」の3つで考えると分かりやすい
- 発令は「兼務を命ずる」「兼ねて命ずる」、解除は「兼務を解く」が基本
- 地方公務員は自治体の規程、国家公務員は人事院規則8-12の「併任」で扱う





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