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来週、辞令交付があると聞いたけれど、何をする場なのかよく分からない。人事の担当になって、初めて辞令を渡す段取りを任された。そんな方も多いはずです。
結論から言うと、辞令交付とは、人事の内容を書いた辞令を本人に正式に渡すことです。会社では法律で決まったやり方はなく、就業規則や慣行で決まります。
この記事を読めば、辞令交付の意味と、渡す側・受ける側それぞれの段取りが分かります。
辞令交付とは?まず押さえたい意味
辞令交付とは、異動・昇進・採用などの人事を書いた辞令を、会社や役所から本人に渡すことです。辞令の交付によって、本人は自分の新しい役目を正式に知ることになります。
辞令の交付とは何か、言葉からかみくだいておきますね。
「辞令」は人事の内容を書いた通知や書類のこと、「交付」は役所や会社が書類を正式に渡すことです。2つを合わせて、辞令を正式に手渡すことを辞令交付と呼びます。
辞令そのものの意味や種類は、辞令とは?意味と種類、内示との違いで詳しく紹介しています。
会社の辞令交付に法律の決まりはない
『法律で、辞令は紙で渡すと決まっているの?』と気になりますよね。
実は、会社員の辞令や発令には、法律で決まった定義がありません。労働基準法や労働契約法などの本文には、「辞令」という語そのものが出てこないんです。
法律で書面が求められているのは、入社の時や有期契約を更新する時の労働条件の明示です(労働基準法第15条・同施行規則第5条)。入社した後の異動のたびに書面を出せ、という定めではありません。
だから会社の辞令交付は、就業規則や社内の慣行で「誰が・いつ・どうやって渡すか」が決まります。
公務員の辞令交付にはルールがある
一方、公務員の辞令交付には、規則や規程があります。国家公務員の場合、人事院規則8-12の第53条で、採用・昇任・転任・配置換などの時に「人事異動通知書」を交付しなければならないとしています。
地方公務員は、自治体ごとの規程で決めています。例えば札幌市の規程は、第2条で「職員の発令は、辞令書の交付により行うものとする」としています。
| くらべる点 | 会社員の辞令交付 | 公務員の辞令交付 |
|---|---|---|
| 決まりのありか | 就業規則・社内の慣行 | 人事院規則・自治体の規程 |
| 書類の呼び方 | 辞令・辞令書・任命書など | 人事異動通知書・辞令書 |
| 紙で渡すか | 会社の決め方しだい | 原則は書面、例外を規程で定める |
| 確かめる先 | 人事部・総務部 | 所属の人事担当課 |
辞令交付が行われる主な場面
辞令交付は、異動の時だけのものではありません。入社した時や、休職から戻った時などにも辞令が交付されます。
国家公務員の場合、人事院規則8-12で、通知書を交付する場面が細かく決められています。会社の場面と並べると、次のようになります。
| 場面 | 会社でよくある辞令 | 国家公務員(人事院規則8-12) |
|---|---|---|
| 入社・採用 | 入社の辞令、配属の辞令 | 採用した時に交付(第53条) |
| 異動・昇進 | 異動の辞令、昇進の辞令 | 昇任・転任・配置換の時に交付(第53条) |
| 休職・復職 | 休職の辞令、復職の辞令 | 休職は通知書を交付して行う(第54条)、復職も交付(第53条) |
| 降格 | 降格や役職を解く辞令 | 降任は通知書を交付して行う(第54条) |
| 退職 | 退職の辞令 | 辞職の承認や退職の時に交付(第53条) |
降格の辞令の交付は、本人にとって気持ちの整理が要る場面です。会社では、大勢の前ではなく個別に渡すなど、渡し方にも気を配っておきたいところです。
入社の辞令の交付については、入社・採用の辞令とは?で紹介しています。
辞令交付はいつ?交付日と発令日の違い
辞令交付の日(交付日)と、辞令の効力が始まる日(発令日)は、同じ日のこともあれば別の日のこともあります。辞令に書かれる日付は、ふつう発令日です。
「辞令交付っていつあるんですか?」
「発令日の当日に渡すところもあれば、前もって渡すところもあるんです」
こんなふうに、辞令交付がいつかは、会社や役所によって違います。
交付日と発令日は別もの
まず言葉を分けておきますね。発令日は、辞令の効力が始まる日のことです。交付日は、辞令を実際に受け取る日のことです。
人事院の通知では、人事異動通知書の「日付及び任命権者」欄に、異動を発令した年月日などを「発令日」として書くとしています。同じ発令日の2つ以上の異動は、1枚の通知書にまとめてよいとされています。
日付の違いは、辞令と発令の違い|発令日・交付日・辞令日でカレンダーのように並べて紹介しています。
公表されている自治体の例
辞令交付がいつ行われるかの例として、自治体が公表している資料を見てみましょう。
- 高知市(令和4年3月22日の庁議報告):4月1日付の異動で、課長級以上などに交付式を開き、その他の職員には9時以降に異動元の課長から辞令書を配る
- 山口市(令和7年3月31日の報道資料):4月1日の9時から幹部職員の辞令交付式、10時15分から新規採用職員の辞令交付式
- 舞鶴市(令和8年3月27日の報道発表):令和8年4月1日に、新規採用職員と人事異動の辞令交付式を開く
どの例も、発令日の朝に辞令を渡しています。ただ、会社では前の月のうちに渡すところもあるので、日程は人事からの案内で確かめておきましょう。
辞令の渡し方は3通り:対面・オンライン・郵送をくらべる
辞令の渡し方は、大きく「対面で手渡す」「メールや社内システムで送る」「郵送する」の3通りです。どれを使うかは、会社なら就業規則、公務員なら規程で決まります。
辞令の渡し方というと、壇上で手渡す場面を思い浮かべますよね。実は、それ以外の方法を使う会社や役所もあるんです。

| くらべる点 | 対面で手渡す | メール・社内システム | 郵送 |
|---|---|---|---|
| よく使う場面 | 交付式・朝礼・個別の面談 | 拠点が多い会社・在宅勤務の人 | 休職中・遠方・退職後の人 |
| 本人に伝わったか | その場で分かる | 開封や受け取りの返信で確かめる | 配達の記録で確かめる |
| 準備するもの | 辞令書・会場・読み上げの順番 | 送る文面・添付ファイル・宛先 | 辞令書・送り状・封筒 |
| 気をつけたいこと | 名前の読み方を間違えない | 宛先違いと、ほかの人への転送 | 届く日と発令日のずれ |
対面で手渡す
いちばん多いのが、この方法です。交付式のように大勢の前で渡す形もあれば、上司が個室で1人ずつ渡す形もあります。

交付式の流れは辞令交付式とは?流れ・式次第で紹介しています。
メールや社内システムで送る
会社の場合、辞令をメールや社内システムで送るやり方もあります。法律で紙と決まっていないので、就業規則や社内の決まりに沿っていれば、この方法を使う会社もあります。
公務員でも、紙の交付に代える方法が規程にある例があります。京都市上下水道局の規程では、一定の異動について、記載事項を書いた文書の掲示などで人事異動通知書の交付に代えることがあるとしています。
電子化の考え方は、辞令の電子化・ペーパーレスで詳しく紹介しています。
郵送する
本人が休職中や遠方にいて、手渡しが難しい時は、郵送で辞令を交付することがあります。
例えば堺市の分限・懲戒の辞令書は、職員に直接交付するのが原則です。ただし、直接交付しにくい場合は、配達証明郵便その他の確実な方法で送るとしています。
公務員の退職辞令は郵送でもらえる?
公務員の退職辞令を郵送でもらえるかどうかは、所属する役所の規程や運用しだいです。退職の日に辞令交付を行う自治体もあり、高知市では令和7年3月31日、市長が退職する職員に辞令交付を行ったと庁議で報告しています。
退職日に出られない事情がある時は、早めに所属の人事担当課に相談してみてください。郵送にしてもらえるか、後日の受け取りになるかを案内してもらえます。
- 送り先の住所が今の住所になっているか
- いつごろ届く予定か
- 受け取った後に返送する書類があるか
- 退職証明など別の書類が要る時は、申請の窓口がどこか
退職の辞令や、会社の退職証明書との違いは退職辞令とは?で紹介しています。
渡す側と受ける側、2列で見る辞令交付の段取り
辞令交付は、渡す側(人事・上司)と受ける側(本人)が、同じ時間の流れの中でそれぞれ準備することがあります。2列で並べておくと、抜けや漏れに気づきやすくなります。
人事の担当になると、『何から手をつければいいの?』と迷いますよね。ここでは、辞令交付の前後を時間の順に並べて、渡す側と受ける側を1つの表にしました。

| 時期 | 渡す側(人事・上司)の段取り | 受ける側(本人)の確認事項 |
|---|---|---|
| 内示のころ | 異動の内容を固め、本人に内示する | 異動先・役職・発令日をメモする |
| 交付の数日前 | 辞令書を作り、氏名・役職・発令日を照らし合わせる | 交付の日時・場所・服装の案内を確かめる |
| 交付の前日まで | 渡す順番・読み上げる人・会場を決める | 名前を呼ばれた時の返事と動きを確認する |
| 交付の当日 | 辞令を読み上げ、本人に手渡す | 辞令を受け取り、礼をして下がる |
| 交付の後 | 控えを保管し、社内に知らせる | 辞令をなくさないよう保管する |
渡す側がつまずきやすいところ
辞令書の中身は、名前や日付が1か所でも違うと作り直しになります。作った人とは別の人が読み合わせると安心です。
- 名前の漢字や読み方を間違えて読み上げてしまう
- 辞令書の発令日と、社内に知らせた日付がずれている
- 渡す順番が決まっておらず、当日に待たせてしまう
辞令書の文面の作り方は辞令の書き方|「命ずる」「免ずる」の文例、社内への知らせ方は辞令の社内掲示・社内通知で紹介しています。
受ける側が当日までにしておくこと
受ける側は、そこまで身構えなくても大丈夫です。案内に書かれた時間と場所を確かめて、名前を呼ばれた時の返事を決めておけば十分です。
受け取る時の手の動きや礼は、辞令の受け取り方で順番に紹介しています。
会社で辞令を交付する時の段取り
会社が辞令を交付する時は、まず就業規則で人事異動の決まりを確かめ、次に辞令書の中身と渡し方を決めます。交付した後の控えの保管まで含めて、1つの流れとして考えておきましょう。
ここからは、会社で辞令を交付する担当者向けの話です。「辞令を交付する」と言っても、準備することは意外と多いんです。
- 就業規則で、人事異動を命じる決まりがあるかを確かめる
- 異動の内容・発令日・交付日を決める
- 辞令書を作り、別の人と読み合わせる
- 渡し方(対面・メール・郵送)と、渡す人を決める
- 当日に辞令を交付し、控えを保管する
就業規則の人事異動の決まりを確かめる
厚生労働省のモデル就業規則には、人事異動の規程例があります。第8条で「会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある」としています。
ただし、同じ解説で、本人の同意を得るようにすることが大切だとも書かれています。辞令を渡す前に、本人と話す時間をとっておくと、受け取る側も落ち着いて向き合えます。
育児や介護をしている人の勤務地を変える時は、その状況に配慮することが育児・介護休業法第26条で求められています。
辞令書に押印は要る?
『辞令書には社印がないとだめなの?』という声もよく聞きます。
辞令に押印を求める法令は、確認できませんでした。内閣府などの「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)では、契約について、特段の定めがある場合を除き押印がなくても効力に影響はないとしています。
社印を押すかどうかは、社内の文書の決まりに合わせて決めてみてください。
交付した後の控えの保管
労働基準法第109条では、労働者名簿や賃金台帳、雇入れ・解雇などの労働関係に関する重要な書類を5年間保存するとしています。経過措置で、当分の間は3年間です(第143条)。
ただ、辞令の控えがこの「重要な書類」に当たるかを示した公的な資料は、確認できませんでした。保管の期間は社内で決めておくと迷いません。
保管の考え方は辞令書は捨てていい?保管期間の目安で紹介しています。
辞令の代読とは?交付する人が出られない時
辞令の代読とは、本来辞令を渡す人が出られない時に、ほかの人が辞令の文面を代わりに読み上げることです。決まったやり方はないので、組織の慣例に合わせて準備します。
社長や市長などが急な用事で出られない時、『辞令交付は延期になるの?』と心配になりますよね。
そんな時に使われるのが代読です。代読は、本人に代わって文面を読み上げることを言います。
例えばこんな場面です。
「本日、社長が出張のため、辞令は副社長が代読いたします」
このように、司会が最初にひと言伝えてから進めるのが自然です。
- 誰が代読するかを、前もって決めておく
- 辞令書の名義(社長名など)は変えずに読み上げるかを確かめる
- 司会の最初のひと言で、代読であることを伝える
- 名前の読み方を、代読する人とも共有しておく
辞令書の名義をどうするかは、組織の決まりによります。公務員の場合は、任命権者の名前で出す決まりがあるので、人事担当課に確かめておきましょう。
辞令交付についてよくある疑問に答えます
知恵袋などでよく見かけるのは「交付式では何をするの?」「参加は強制?」「司会で名前をどう呼ぶ?」の3つです。どれも、組織の案内を確かめるのが近道です。
辞令交付について、ネットのQ&Aでよく見かける疑問を3つ取り上げます。質問は要約して紹介しますね。
疑問1:公務員の辞令交付式って何をするの?初日から仕事?
閲覧数がとても多い質問です。新しく公務員になる人が、初日の流れを知りたいという内容でした。
辞令交付式では、辞令を受け取るほか、新規採用職員の式なら服務の宣誓や首長の訓辞が入ることがあります。山口市の報道資料では、新規採用職員の式は「辞令交付(全員)・服務の宣誓・市長訓辞」の流れでした。
式の後は、配属先に移ったり研修が始まったりと、組織によってさまざまです。案内の資料に書かれた予定を確かめてみてください。
疑問2:辞令交付式への参加は強制?
急に「明日の辞令交付式に出られますか」と聞かれて、戸惑ったという相談です。
辞令交付式への参加を義務づける法律の定めは、確認できませんでした。ただ、辞令は人事を正式に伝える大事な場なので、組織としては出てほしいと考えるのが自然です。
出られない事情がある時は、正直に伝えて、辞令をどう受け取ればいいかを相談しておきましょう。後日の手渡しや郵送で受け取れることもあります。
疑問3:司会で、職員の名前をどう呼べばいい?
辞令交付式の司会を任されて、一人一人の名前を呼ぶ時の言い方に迷っているという相談です。
名前の呼び方に決まったルールはなく、組織ごとの慣例があります。前の年の式次第や台本が残っていれば、それに合わせるのがいちばん安心です。
| 確かめること | 例 |
|---|---|
| 敬称をつけるか | 「○○ ○○さん」「○○ ○○君」など、慣例に合わせる |
| 役職から読むか | 「営業部長 ○○ ○○」のように役職を先に読むか |
| 読み方の確認 | 名簿にふりがなを入れ、前日までに本人の読み方を確かめる |
| 呼ぶ順番 | 役職の順か、部署の順か |
辞令をきっかけに、これからの働き方を考える
辞令交付は、新しい役目が正式に始まる節目です。今の会社で続けることを前提にしながら、この先の働き方を一度ふり返ってみるきっかけにもなります。
辞令を受け取ると、『この先もこの会社でやっていくのかな』とふと考えることもありますよね。
異動や昇進の辞令を受けて、新しい役目に前向きに向き合うのは、もちろん大事な選択です。そのうえで、外の選択肢も知っておくと、今の会社で続ける道とくらべて判断しやすくなります。
辞令をきっかけにキャリアを見直したい時は、転職のプロに話を聞いてみるのもひとつの方法です。
LHH転職エージェント(PR)
辞令をきっかけに働き方を見直すなら、転職エージェントに相談してみる
転勤や異動の辞令は、これからの働き方を考えるきっかけにもなります。今の会社で続ける道と並べて、勤務地や仕事内容の希望を伝えて求人を紹介してもらえる転職エージェントで、選択肢を確かめておくのも一つの方法です。
転職サポートLHH転職エージェントの公式サイトを見る(転職エージェント「LHH転職エージェント」の公式サイトに移動します。サービスの内容・利用条件は公式サイトで最新の情報をご確認ください)
転勤や異動の少ない仕事を考えたい時の進め方は、転勤・異動の少ない仕事へ転職するにはで紹介しています。
よくある質問
辞令交付とは何ですか?
異動・昇進・採用などの人事を書いた辞令を、会社や役所から本人に正式に渡すことです。会社では法律で決まったやり方はなく、就業規則や慣行で決まります。
辞令交付日と発令日は同じですか?
同じ日のこともあれば、別の日のこともあります。発令日は辞令の効力が始まる日、交付日は辞令を受け取る日です。辞令に書かれる日付は、ふつう発令日です。
辞令はメールで受け取っても有効ですか?
会社員の辞令は、法律で紙と決まっているわけではありません。就業規則や社内の決まりでメールや社内システムを使うとしていれば、その方法で受け取ることになります。
辞令交付の日に休んでしまったらどうなりますか?
辞令の効力は、ふつう発令日から始まります。後日の手渡しや郵送で受け取れることが多いので、人事や上司に受け取り方を相談してみてください。
まとめ
- 辞令交付とは、人事を書いた辞令を本人に正式に渡すこと
- 会社の辞令交付は就業規則や慣行で決まり、公務員は規則や規程で決まる
- 交付日と発令日は別もので、辞令に書くのはふつう発令日
- 渡し方は対面・メールや社内システム・郵送の3通り
- 代読や郵送の時は、組織の決まりを人事担当に確かめる





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