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『辞令って、紙で渡さないといけないの?メールで送ってもいいの?』と迷っている人事の方も、『辞令をもらってないけど大丈夫?』と気になっている方もいるはずです。
結論から言うと、会社員の辞令を紙で渡すことを求める法律は確認できず、辞令の電子化やメール・口頭での通知も会社の決め方しだいです。ただ、形によって残る記録が違うので、確かめておきたいことも変わります。
この記事を読めば、紙・電子・口頭の3つの辞令の違いと、ペーパーレスにする時の注意が分かります。
辞令の電子化はできる?先に結論
労働基準法や労働契約法の本文には「辞令」という言葉がなく、会社員の配転や昇進のたびに書面を出す義務は確認できませんでした。辞令の電子化やペーパーレス化は、会社が就業規則や社内のルールで決めてよい部分です。
『法律の決まりがないなら、何でもありなの?』と思いますよね。
実は、決まりがないからこそ、会社ごとに「どう伝えるか」をはっきりさせておくことが大事なんです。異動や転勤を命じる根拠は、法律ではなく就業規則や労働契約にあります。
法律で書面が決まっているのは入社の時
書面での明示が法律で求められているのは、労働契約を結ぶ時です。労働基準法15条と施行規則5条で、就業場所や業務などを書面で明示することになっています。
この労働条件の明示は、平成31年(2019年)4月1日から、本人が希望すればメールなどでもできるようになりました。ただし、本人が出力して書面を作れる形に限られます。
2024年4月1日からは、入社の時に就業場所や業務の「変更の範囲」も明示することになりました。将来の異動でどこまで変わりうるかは、辞令ではなく、入社時の労働条件通知書で確かめるものなんです。
| 書類 | 法律の決まり | 電子で渡せるか |
|---|---|---|
| 労働条件通知書(入社の時) | 労働基準法15条・施行規則5条で明示が必要 | 本人が希望すればメール等も可 |
| 異動・昇進の辞令 | 書面を出す義務は確認できない | 会社の決め方しだい |
| 国家公務員の人事異動通知書 | 人事院規則8-12で交付を定める | 電子交付の可否は確認できない |
辞令書という書類そのものについては、辞令書とは?で紹介しています。
紙・電子・口頭の3つの辞令、残る記録をくらべる
辞令の伝え方は「紙の辞令書」「メールやシステムの電子の辞令」「口頭だけの辞令」の3つに分けられます。いちばんの違いは、あとで中身を確かめられる記録がどれだけ残るかです。
伝え方ごとに、残るものと気をつけたいことを並べてみました。

| くらべる点 | 紙の辞令書 | 電子の辞令(メール・システム) | 口頭だけの辞令 |
|---|---|---|---|
| 本人の手元に残るもの | 辞令書の原本 | メールやシステムの画面 | 何も残らない |
| あとで確かめやすさ | 高い | 保存しておけば高い | 低い |
| 会社の手間 | 印刷・押印・手渡し | 送信と保存のルール作り | 少ない |
| 本人が確かめておくこと | なくさず保管する | 出力やダウンロードをしておく | 発令日と中身をメモし、メールで確認をもらう |
電子の辞令は「保存」が決め手
メールやシステムで辞令を通知する会社が増えています。紙が要らないので、離れた拠点の人にも同じ日に届けられるのが良いところです。
ただ、退職するとシステムに入れなくなることもあります。届いた辞令は、PDFで保存したり印刷したりしておきましょう。
紙の辞令書にも良さはある
辞令のペーパーレス化が進んでも、紙の辞令書をあえて残す会社もあります。手渡しの場で上司から一言を添えられるので、節目の行事として大事にしたい会社には向いているんです。
本人にとっても、紙は保存の手間がいちばん少ない形です。引き出しに入れておけば、退職した後でも中身を確かめられます。
口頭だけの辞令は「確認のメール」で残す
辞令を口頭のみで伝える会社もあります。法律上、口頭だと無効になるという決まりは確認できません。
ただ、言った言わないになりやすいのが口頭の弱いところです。中身を聞いたら、自分からメールで確かめておくと安心ですよ。
「先ほどの件、○月○日付けで営業部への異動と理解しました。間違いがあれば教えてください」
こんな一文を送っておくだけで、記録が残ります。
- どの人事を紙で、どれをメールや口頭で伝えるか
- 辞令の通知に載せる項目(発令日・氏名・異動の中身・発令者)
- 送ったメールやシステムの記録をどこに保存するか
- 社員が控えを手元に残す方法
「辞令口達」とは?口頭で伝える辞令のこと
口達(こうたつ)は、文書ではなく口で伝えることを指す言葉です。辞令口達は、辞令の中身を口頭で伝えるやり方のことと考えて大丈夫です。
社内の規程で「辞令口達」という言葉を見て、何のことか迷った方も多いはずです。
辞令口達とは、辞令書を渡さずに、上司などが口頭で人事の中身を伝えるやり方のことです。組織の変更に伴う異動など、本人への影響が小さい時に使われることが多い方法です。
例えば、同じ部の中で係が変わるだけの場合を考えてみてください。朝礼で「本日付けで○○係をお願いします」と伝えて終わり、という会社も少なくありません。
『それって正式な辞令なの?』と不安になったら、社内の規程に辞令口達の決まりがあるかを人事に聞いてみましょう。
公務員にも、紙を省ける場面がある
公務員でも、いつも紙の辞令が出るとは限りません。人事院規則8-12の第55条では、課の中での配置換などは「通知書に代わる文書の交付その他適当な方法」で代えられるとしています。
自治体の規程にも例があります。札幌市の規程では、勤務や兼務の発令などは「口頭その他の方法により発令するものとする」としています。
| 規程の例 | 紙を省ける場面の例 | 代わりの方法 |
|---|---|---|
| 人事院規則8-12 第55条 | 課の中での配置換、組織の変更に伴う転任など | 代わりの文書の交付その他適当な方法 |
| 札幌市の規程 第5条 | 勤務・兼務の発令、昇格・昇給の発令など | 口頭その他の方法 |
| 京都市上下水道局の規程 第5条 | 昇任・配置換・兼職などを命じたり解いたりする時 | 文書の掲示その他の適当な方法 |
同じ京都市上下水道局の規程では、公印の印影を印刷することで、公印の押印に代えることがあるとしています。紙を残す場合でも、手で押す手間を減らす方法があるんですね。
辞令の紙を廃止する・押印をなくす時の注意
押印をしなくても、契約の効力には影響しないと国のQ&Aで示されています。辞令の押印を求める法令も確認できませんでした。大事なのは、廃止したあとに中身をどう残し、どう確かめられるかです。
『辞令の紙を廃止したら、社員から不満が出ないかな』と心配になる人事の方もいますよね。
押印についての国の考え方
内閣府・法務省・経済産業省の「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)では、契約は当事者の意思が合えば成立し、書面や押印は特段の定めがある場合を除き必要な要件ではない、としています。
一方で、本人の押印があると、文書が本人の意思で作られたと推定されやすくなる、という説明もあります。押印をなくすなら、別の方法で「誰がいつ出したか」が分かるようにしておきたいところです。
辞令交付を廃止するより「簡素化」の例が多い
辞令交付の行事そのものを廃止したと公表した自治体の資料は、確認できませんでした。その代わり、対象をしぼって簡素にした例はあります。
高知市の庁議の資料(令和4年3月22日)では、4月1日付けの人事異動について、課長級以上と国などへの派遣職員を対象に交付式を開き、その他の職員には異動元の課長から辞令書を配ると説明しています。
全部をやめるか残すかの二択ではなく、場面ごとに形を変えるやり方もある、ということですね。
辞令の電子交付に切り替える時の手順

- 就業規則や社内規程の、辞令の交付方法の書き方を確かめる
- メール・社内システムなど、どの方法で通知するかを決める
- 発令日・氏名・異動の中身・発令者を漏れなく載せる様式を作る
- 会社側の保存の場所と期間を決める
- 社員に、受け取ったら保存しておくよう案内する
発令日の考え方は辞令と発令の違い、社内への知らせ方は辞令の社内掲示・社内通知で紹介しています。
辞令交付を廃止したのに、社員への案内をしないままにしてしまう例です。「辞令をもらっていない」という問い合わせが増えるので、切り替えの時期と新しい受け取り方を先に知らせておきましょう。
辞令の電子化でよくある疑問
辞令を紙でもらえない、口頭だけだった、という質問を選んで答えます。
転勤の辞令の用紙をもらっていない
「転勤の辞令の用紙をもらっていません。辞令を渡さない会社もありますか?」という質問がありました。
辞令書を渡すかどうかは会社の決め方しだいなので、渡さない会社もあります。手続きで書面が必要な時は、人事に「辞令書か、異動を証明する書類を出してもらえますか」と頼んでみてください。
口頭だけの会社もあるけれど、書面なら会社の印はある?
「最近は口頭だけの会社もあるようですが、書面の場合は会社の捺印がありますか?」という質問もよく読まれています。
押印するかどうかも会社ごとに違います。辞令の押印を求める法令は確認できないので、印がない辞令でも、それだけでおかしいとは言えません。
退職の時に辞令を出さない方針と言われた
「退職するのに、辞令は出さない方針だと言われた」という相談もありました。
退職の辞令を出すかどうかも会社しだいです。退職したことを示す書類が必要なら、労働基準法22条の退職証明書を請求できますよ。
家族の転勤が口頭だけで、手続きの書類がない
「家族の転勤の辞令の紙がなく、口頭で知らされただけ。ハローワークの手続きはどうなる?」という質問もありました。
どの書類で足りるかは、手続きの窓口が決めることです。先にハローワークに必要な書類を聞き、そのうえで家族の勤め先に、転勤を示す書類を出してもらえないか相談してみてください。
辞令をもらっていないと不安になりますが、まずは何に使いたいかを考えてから頼むと話が早いです。働き方を見直すきっかけになったなら、今の会社で続ける道と並べて、外の求人も一度確かめておくと判断しやすくなります。
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よくある質問
辞令をメールで通知しても問題ありませんか?
会社員の辞令を紙で渡すことを求める法律は確認できず、メールで通知する会社もあります。就業規則に交付の方法が書かれている場合は、その書き方に合わせて運用します。
辞令が口頭のみでも有効ですか?
口頭だと無効になるという決まりは確認できません。ただ記録が残らないので、発令日と中身をメールで確かめておくと安心です。
辞令をもらってない時はどうすればいいですか?
会社によっては辞令書を出さないこともあります。手続きで書面が必要なら、人事に異動を証明する書類を頼み、退職後なら退職証明書を請求できます。
辞令の電子交付で押印は要りますか?
辞令の押印を求める法令は確認できず、国のQ&Aでは押印がなくても契約の効力に影響しないとしています。誰がいつ出したかが分かる様式にしておくのがおすすめです。
辞令の交付を廃止しても大丈夫ですか?
会社員の辞令を紙で交付する法律の義務は確認できないので、会社の判断で廃止できます。就業規則の書き方を見直し、新しい通知の方法を社員に先に知らせておきましょう。
まとめ
- 会社員の辞令を紙で渡す法律の義務は確認できず、電子化は会社の決め方しだい
- 紙・電子・口頭では、あとで確かめられる記録の残り方が違う
- 口頭の辞令は、自分からメールで確かめて記録を残す
- 紙や押印を廃止する時は、様式・保存・社員への案内を先に決める





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