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入社式や初出社の日に、名前を呼ばれて一枚の紙を渡された。『これが入社の辞令?雇用契約書とは別物なの?大事に取っておくべき?』と、手元の書類を見比べて迷いますよね。
結論から言うと、入社の辞令は「この日付であなたを採用しました」と会社が正式に知らせる書類です。働く条件そのものを決めるのは、雇用契約書や労働条件通知書のほうなんです。
この記事を読めば、入社時にもらう書類の役割の違いと、新入社員の配属辞令の見方、受け取った後に確かめたいことが分かります。
入社の辞令とは?採用辞令と同じもの?
入社の辞令と採用辞令は、ほぼ同じ意味で使われています。どちらも「採用した」「どこに配属した」を知らせる書類で、呼び方は会社によって違います。
『入社辞令と採用辞令、名前が違うから中身も違うのでは?』と思う方も多いはずです。
実は、どちらも辞令という書類の一つで、法律で決まった呼び方はありません。労働基準法や労働契約法の本文には「辞令」という言葉そのものが出てこないんです。
ですから、入社の時に辞令を出すかどうか、何と呼ぶかは、会社の就業規則や慣行で決まります。辞令を出さず、入社式の案内と雇用契約書だけで済ませる会社もあります。
| 呼び方 | よく書かれる中身 | 主に使われる場面 |
|---|---|---|
| 採用辞令 | 「○○として採用する」という採用の事実と日付 | 新卒・中途の入社時 |
| 入社辞令 | 採用辞令とほぼ同じ。入社日付と所属 | 入社式・入社手続きの日 |
| 配属辞令 | 「営業部勤務を命ずる」など最初の所属先 | 研修後、または入社と同時 |
| 新入社員の辞令(総称) | 上の3つをまとめて呼ぶ言い方 | 社内の会話・案内 |
辞令そのものの意味や種類は辞令とは?意味をわかりやすくで紹介しています。
入社の辞令に書かれることが多い項目
入社の辞令に何を書くかも、法律では決まっていません。一般的には、次のような項目を1枚にまとめる会社が多いですよ。
- 宛名(あなたの氏名)
- 採用の事実(「社員として採用する」など)
- 最初の所属(「営業部勤務を命ずる」など)
- 発令日(辞令の効力が始まる日。「令和○年○月○日付」)
- 会社名と代表者名
発令日は、入社日と同じ日にすることがほとんどです。発令日と交付日の違いは辞令と発令の違いで詳しく紹介しています。
採用辞令・雇用契約書・労働条件通知書は何が違う?
入社時の3つの書類は、役割がまったく違います。辞令は「知らせ」、雇用契約書は「約束」、労働条件通知書は「条件の明示」と覚えておくと迷いません。
入社の日には、書類を何枚もまとめて渡されますよね。『どれが一番大事なの?』と思ったら、それぞれが何を決めているかを見てみてください。

| くらべる点 | 採用辞令(入社の辞令) | 雇用契約書 | 労働条件通知書 |
|---|---|---|---|
| 役割 | 採用と配属を知らせる | 会社とあなたの合意を書き残す | 会社が働く条件を明示する |
| 法律で出す義務 | 確認できる定めはない | 書面の形は決まっていない | 労働基準法15条で明示が義務 |
| 主な中身 | 採用日・所属・発令日 | 賃金・期間・仕事など合意した内容 | 契約期間・就業場所・業務・労働時間・賃金など |
| サイン | 会社からの一方通行 | 双方が署名・押印することが多い | 会社から交付する |
| 条件の根拠になるか | 根拠としては弱い | なる | なる |
労働条件通知書は法律で決まった書類
労働基準法15条1項は、会社が労働契約を結ぶ時に、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければならないと決めています。
どの項目を書面で示すかは、労働基準法施行規則5条で決まっています。契約期間や就業場所・業務、労働時間、賃金などは、書面で明示する対象です。
『じゃあ雇用契約書と労働条件通知書は何が違うの?』と思いますよね。労働条件通知書は会社が条件を知らせる書類、雇用契約書は双方が合意した証拠という違いです。
2つを1枚にまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」を使う会社も多いですよ。
2024年4月からは「変更の範囲」も書かれる
2024年4月1日からは、労働条件を明示する時に、就業場所と業務の「変更の範囲」も書くことになりました(労働基準法施行規則5条1項1号の3)。
「変更の範囲」とは、将来の配置転換などで変わり得る就業場所・業務の範囲のことです。厚生労働省の資料では、次のような書き方の例が示されています。
| パターン | 書き方の例(厚生労働省の記載例より) |
|---|---|
| 限定がない | (雇入れ直後)仙台営業所 (変更の範囲)会社の定める営業所 |
| 一部に限定 | (雇入れ直後)豊橋 (変更の範囲)愛知県内 |
| 完全に限定 | (雇入れ直後)金沢駅西通り店 (変更の範囲)変更なし |
新ルールが使われるのは、令和6年4月1日以降に結ばれた労働契約です。すでに働いている人に、改めて明示し直す義務はありません。
最初の配属先は、辞令と労働条件通知書の両方に書かれていることがあります。将来どこまで異動があり得るかを知りたい時は、通知書の「変更の範囲」を見てみてください。
条件が事実と違った時はどうなる?
労働基準法15条2項では、明示された労働条件が事実と違う場合、働く人はすぐに労働契約を解除できるとされています。
さらに3項では、就業のために引っ越した人が、解除の日から14日以内に帰郷する時は、会社が必要な旅費を負担すると決められています。
『辞令の内容と、聞いていた条件が違う気がする…』と感じたら、まず通知書と照らし合わせて、人事の担当者に確かめておきましょう。
受け取ったら確かめたいこと
- 辞令の発令日と、雇用契約書の契約開始日が合っているかを見る
- 辞令の配属先が、通知書の就業場所・業務と食い違っていないかを見る
- 通知書に就業場所・業務の「変更の範囲」が書かれているかを確かめる
- 契約期間の定めがあるか(有期か無期か)を確かめる
- 分からない言葉があれば、入社手続きの時に人事に聞いておく
入社の書類はいつまで保管する?
会社の側には、労働基準法109条で「雇入れ」などに関する重要な書類を保存する義務があります。本則は5年間で、経過措置により当分の間は3年間とされています。
一方、働く人が辞令や雇用契約書を何年持っておくべきか、という決まりはありません。条件を確かめる時の手がかりになるので、在職中は手元に残しておくのがおすすめです。
保管の考え方は辞令書は捨てていい?保管期間の目安で紹介しています。
新入社員の配属辞令はいつ出る?文例と見方
新入社員の配属辞令は、入社と同時に出る会社と、研修が終わってから出る会社があります。どちらになるかは会社の慣行で決まるので、入社前の案内や人事の説明を確かめてみてください。
『入社式で辞令をもらったのに、まだ配属先が書いてない』という方もいるはずです。それは研修後に配属辞令を出す会社だからかもしれません。

新入社員の辞令の文例
新入社員の採用辞令の書き方は、会社ごとに違います。よく見かける形を、伏せ字で並べてみました。
○○ ○○ 殿
社員として採用する
令和○年○月○日
株式会社○○ 代表取締役 ○○ ○○
○○ ○○ 殿
営業部営業課勤務を命ずる
令和○年○月○日
株式会社○○ 代表取締役 ○○ ○○
採用と配属を1枚にまとめて「社員として採用し、営業部勤務を命ずる」と書く会社もあります。新入社員の採用辞令と配属辞令が一緒になった形ですね。
辞令の書き方のルールは辞令の書き方、雛形の作り方は辞令のテンプレート・書式で紹介しています。
入社と配属のタイミングは3パターン
| パターン | 辞令の出方 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 入社と同時に配属 | 採用辞令と配属辞令を同じ日に、または1枚で | 最初の仕事と勤務地 |
| 研修後に配属 | 入社日に採用辞令、研修後に配属辞令 | 研修中の所属と、配属の時期 |
| 仮配属のあと本配属 | 仮の所属の辞令のあと、改めて配属辞令 | 仮配属の期間と、本配属の決め方 |
研修の後で配属が決まる時は、希望を聞く面談があることもあります。聞かれた時に答えられるよう、やってみたい仕事を考えておくといいですよ。
入社してすぐ異動の辞令が出ることはある?
あります。厚生労働省のモデル就業規則には、業務上必要な場合に、就業場所や従事する業務の変更を命じることがあるという規定例があります。
ただ、勤務地や職種を限定する約束をしていれば話は別です。労働条件通知書の「変更の範囲」が「変更なし」になっていないかを見てみてください。
異動の辞令の種類と、出た後にやることは異動の辞令とは?で紹介しています。
配属辞令の部署名だけを見て、勤務地を思い込んでしまうことがあります。同じ部署名でも拠点がいくつかある会社もあるので、勤務場所まで確かめておきましょう。
パート・契約社員にも辞令は出る?試用期間終了の辞令は?
パートや契約社員に辞令を出すかどうかも、会社の決め方しだいです。ただ、労働条件の明示は雇用形態に関係なく会社の義務なので、通知書は受け取れます。
『正社員じゃないから、辞令はもらえないのかな』と気にする方もいますよね。
労働基準法15条の労働条件の明示は、正社員かパートかを問わず、労働契約を結ぶ時の会社の義務です。辞令が出なくても、条件を書いた書面は受け取れるんです。
パート・契約社員の辞令の出方
| 雇用形態 | 辞令が出るか | 確かめたい書類 |
|---|---|---|
| パート・アルバイト | 出す会社も出さない会社もある | 労働条件通知書(契約期間・更新の有無) |
| 契約社員(有期契約) | 契約ごとに辞令を出す会社もある | 契約期間と更新の基準・更新上限 |
| パートから正社員へ | 「正社員に登用する」と辞令を出すことが多い | 新しい労働条件通知書 |
有期契約は、更新するたびに新しい契約を結ぶ扱いです。厚生労働省のQ&Aでは、令和6年4月1日以降の更新時には新しいルールで明示が必要とされています。
同じ時に、有期契約では更新上限の有無と内容、無期転換を申し込める機会、無期転換後の労働条件の明示も加わりました。契約社員の辞令をもらった時は、通知書のこの部分も見ておきましょう。
パートから正社員になる時の辞令
パートから正社員になる時は、「正社員に登用する」といった辞令を出す会社が多いです。この時は、働く条件も変わるので、新しい労働条件通知書や雇用契約書をあわせて受け取るのが自然な流れです。
『辞令はもらったけど、新しい通知書がない』という時は、人事に「新しい条件を書面でいただけますか」と聞いてみてください。
試用期間終了の辞令はあるの?
試用期間の長さや、本採用に切り替える手続きも、法律で決まった形はありません。会社の就業規則や労働条件通知書で決まります。
試用期間が終わった時に「本採用とする」と辞令を出す会社もあれば、何も出さずにそのまま本採用になる会社もあります。
- 試用期間の長さを、労働条件通知書か就業規則で確かめる
- 試用期間中と本採用後で、条件が変わるかを確かめる
- 本採用の時に辞令や新しい書面が出るかを人事に聞く
入社の書類を見比べていると、『この会社でどんなふうに働いていくんだろう』と考えるきっかけにもなりますよね。今の会社で経験を積むのも大切な選択肢です。そのうえで、将来の働き方や、外の選択肢も一度確かめておくと、判断の材料が増えますよ。
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辞令をきっかけに働き方を見直すなら、転職エージェントに相談してみる
転勤や異動の辞令は、これからの働き方を考えるきっかけにもなります。今の会社で続ける道と並べて、勤務地や仕事内容の希望を伝えて求人を紹介してもらえる転職エージェントで、選択肢を確かめておくのも一つの方法です。
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公務員・教員の採用辞令はどう違う?
公務員の採用辞令は、規則で交付が決まっています。国家公務員は人事院規則8-12で、採用した時に「人事異動通知書」を交付することになっています。
会社員の入社の辞令とくらべて、公務員の採用辞令は決まりがはっきりしています。
人事院規則8-12の第53条では、職員を採用した時などに、任命権者が人事異動通知書を交付しなければならないとされています。
国と自治体の採用辞令の文例
| 種類 | 文例(公的な規程・通知より) | 出典 |
|---|---|---|
| 国家公務員の採用 | 「アに採用する」(アは官職の名称と所属) | 人事院の通知(別紙第2) |
| 国家公務員の任期付採用 | 「アに採用する(イによる)任期は 年 月 日までとする」 | 同上 |
| 市の職員の採用 | 「事務(技術)職員に任命する」「何局何部勤務を命ずる」 | 札幌市の規程 |
| 教員の採用 | 「公立学校教員に任命する」「何学校教諭に補する」 | 徳島県教育委員会の規程案 |
自治体の場合は、地方公務員法15条の2で「採用」を「職員以外の者を職員の職に任命すること」と定めています。辞令書の形は、それぞれの自治体の規程で決めています。
新規採用職員の辞令交付式
公務員や教員は、4月1日に新規採用職員の辞令交付式を開く自治体・教育委員会が多くあります。
ある教育委員会の発表では、式次第は「開式の辞、国歌斉唱、辞令交付、宣誓、教育長挨拶、閉式の辞」でした。服務の宣誓があるのが、会社の入社式との違いです。
交付式の流れは辞令交付式とは?流れ・式次第、受け取る時の動きは辞令の受け取り方で紹介しています。
教員の採用辞令は、教育委員会が任命権者として出すのが一般的です。履歴書の職歴欄などで発令者を書く時は、手元の辞令に書かれた名義をそのまま写しておきましょう。
入社の辞令でよくある疑問
入社や採用の辞令について、多く読まれている質問を選んで答えます。
採用辞令と内定通知書は何が違う?
「採用辞令と内定通知書は何が違うのか」という質問は、多く読まれています。
内定通知書は、入社前に「採用する予定です」と知らせる書類として使われることが多いです。採用辞令は、入社の日付で「採用しました」と知らせる書類、という使い分けが一般的ですね。
どちらも法律で決まった書類ではないので、名前や中身は会社によって違います。働く条件は、労働条件通知書と雇用契約書で確かめておきましょう。
中途採用の辞令交付で挨拶はある?答辞は何を言えばいい?
「中途入社の辞令式で代表として答辞を述べることになった」「中途採用の辞令交付で、たくさんの人の前で挨拶させられるのか」という相談も多く見られます。
挨拶があるかどうかは会社によります。答辞を頼まれた時は、お礼、これからの意気込み、周りへのお願い、の3つを短くまとめると話しやすいですよ。
例えばこんな言い方です。
「本日は私たちのために、このような式を開いていただき、ありがとうございます」
「これまでの経験を生かしながら、新しい仕事を一日も早く覚えてまいります。ご指導のほど、よろしくお願いいたします」
挨拶の言い回しは辞令を受けた時の挨拶・返事で紹介しています。
入社式がなく辞令交付式だけ。同じものと思っていい?
「入社式はないが辞令交付式はある。同じものと考えていいか」という質問もありました。
入社式も辞令交付式も、法律で決まった行事ではありません。入社式の中で辞令を渡す会社もあれば、辞令交付だけを式にする会社もあります。
案内に書かれた時間・持ち物・服装に合わせて準備すれば大丈夫です。服装は辞令交付式の服装を参考にしてみてください。
給与辞令の金額が聞いていた額と違う
「入社してから渡された給与の辞令の額が、募集の時に見た額より低い」という相談もありました。
まずは、労働条件通知書に書かれた賃金と見比べてみてください。労働基準法15条2項では、明示された条件が事実と違う場合、すぐに契約を解除できるとされています。
ただ、解除する前に、人事の担当者に食い違いの理由を聞くのが先です。話し合っても解決しない時は、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」に相談できます。給与辞令そのものは給与辞令とは?で紹介しています。
よくある質問
入社の辞令と採用辞令は同じものですか?
ほぼ同じ意味で使われています。どちらも採用した事実と日付、最初の所属を知らせる書類で、呼び方は会社によって違います。
辞令と雇用契約書は何が違いますか?
辞令は会社が採用や配属を知らせる書類で、雇用契約書は会社とあなたが合意した条件を書き残す書類です。働く条件の根拠になるのは、雇用契約書や労働条件通知書のほうです。
入社の辞令がもらえないのは問題ですか?
会社員の採用時に辞令という書面を出す法律上の義務は確認できません。ただ、労働条件の明示は労働基準法15条で会社の義務なので、労働条件通知書は受け取れます。
契約社員やパートにも辞令は出ますか?
出すかどうかは会社によります。辞令が出なくても、契約期間や更新の有無を書いた労働条件通知書は受け取れます。
試用期間終了の辞令は出ますか?
本採用の時に辞令を出す会社もあれば、出さない会社もあります。試用期間の長さや手続きは、就業規則や労働条件通知書で確かめてみてください。
まとめ
- 入社の辞令(採用辞令)は、採用と配属を知らせる書類で、呼び方は会社による
- 働く条件の根拠になるのは、雇用契約書と労働条件通知書
- 2024年4月1日以降の契約では、就業場所・業務の「変更の範囲」も明示される
- パート・契約社員も、労働条件の明示は受けられる
- 公務員は人事院規則8-12などで、採用時の通知書の交付が決まっている





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